住宅は住みはじめてから性能や設備をアップデートさせることが難しいです。予算との兼ね合いから初期費用を抑えることばかりに目が行きがちですが、耐久性が悪く、あとになってメンテナンス費や大きな修繕費が発生してしまっては元も子もありません。本記事では平松建築株式会社・代表取締役の平松明展氏の著書『住んでよかった家 理想の暮らしがずっと続く15の空間』(KADOKAWA)より、太陽光発電と高性能住宅と組み合わせることで、光熱費を抑えつつ快適な暮らしを実現する「大屋根の家」の事例とともに、将来を見据えた住まいづくりのポイントを解説します。

太陽光発電を40年間設置すると…

住宅にかける費用の種類はさまざまにありますが、初期費用のみをクローズアップしてしまう人もいます。もちろん、家を建てたあとにローンの返済が続くわけですから、できるだけ負担を減らしたいところでしょう。ただ、初期費用を抑えることばかり考えて性能を低くしてしまい、結果、耐久性が悪くてメンテナンス費や大きな修繕費が発生しては元も子もありません。性能はあとから高めにくいという側面があることを覚えておいてほしいです。

性能だけでなく設備においても同様のことがいえます。たとえば、太陽光発電の設備です。規模によっても違いますが、初期費用が250万円くらい上乗せになります。仮に40年間の設定にすると、総売電量での売電収入は約1000万円、さらに電気代は約400万円も削減できます。こうしたシミュレーションを知っていれば、考え方が変わってきますよね。ただし、太陽光発電の設置に適しているのは、高性能住宅に限ります。将来を見据えた費用面と生活スタイルを考えてみましょう。



[図表1]事例:省エネを導く大屋根の家 完成:2022年5月、建物面積:96.05m2(29.05坪)、分類:規格住宅、オーナー:UD様(夫婦、子ども2人)

夏でも2階のエアコン1台の稼働で全室快適、電気代は8000円未満

ある夏の日の計測値を紹介します。外が気温32度、湿度70%の日、リビングは気温26.5度、湿度48%です。玄関もほぼ同じ。エアコンによる効果だとしたら限られたスペースだけの数値になりますが、2階のエアコン1台だけの稼働にもかかわらず、玄関や浴室、さらにはクローゼットの中もほとんど同じ数値なのです。これは断熱性、通気性が高いのに加え、開放的な間取りにしているため全室に空気が拡散しているからです。湿度の高いお風呂場も機械換気がいらないくらいです。 

断熱性を高めていること、窓の設置場所や大きさを計算していること、ひさしによって日射量をコントロールしていることもポイントです。WB工法※による通気性、換気性の高さから室内の空気も常に高いクオリティを維持しています。 

※壁の中に空気を通すことで室内の空気を循環させ、夏は涼しく冬や冷え込みを抑え、快適な住環境を実現する工法のこと

夏はエアコンを24時間稼働していますが、電気代は8000円未満とのこと。その理由は、高い省エネ性はもちろんですが、大きな屋根にあります。屋根には太陽光発電を設置しています。発電した電力が生活に活用されているのです。

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1.大屋根の外装デザイン



[図表2]大屋根の外装デザイン

片流れの形状で安定感のあるフォルムに。外壁と屋根に使用しているガルバリウム鋼板と、エントランス部分の外壁の木材が融合したデザインとなっている。