サンドイッチをこよなく愛するパリ在住の文筆家、川村明子さん。『&Premium』本誌の連載「パリのサンドイッチ調査隊」では、パリ中のサンドイッチを紹介しています。
ここでは、本誌で語り切れなかった連載のこぼれ話をお届け。No61となる今回は、本誌No148に登場した『フィカ』で惜しくも紹介できなかったサンドイッチの話を。

サンドイッチの連載を、こんなに楽しく続けられているのは。
ひとえに、発見が尽きないからだと思う。特にパリは、さまざまな国にルーツのある人々が暮らす街ゆえ、いろいろなスタイルのサンドイッチに出合える。主たる具材は馴染みあるものでも、脇役となる具との組み合わせや、合わせるソース、ちょっとした味付けにそれぞれの国や地域の味を思い起こすことが少なくない。
久しぶりに文化センター『スウェーデン・インスティチュート』内にあるカフェ『フィカ』を訪れたときもそうだった。ショーケースに並んだオープンサンドを見てデンマークのコペンハーゲンで食べたサンドイッチを思い出した。コペンハーゲンにはオープンサンドの専門店が何軒かあって、フードコートにスタンドを構えた店では、ショーケースにずらりとオープンサンドが勢揃いしていた。品数でいったら、日本のおにぎり屋さんと同じくらいあったのではないかと思う。選ぶのが楽しくて、出発間際の空港でもオープンサンドを食べたくらい。スウェーデンにはまだ行ったことがないのだけれど、具材から察するに共通した要素が多いにありそうだ。
カフェ『フィカ』では、以前よく友人と待ち合わせをしていた。
決まってランチタイム後のお茶の時間で、シナモンやクローブの合わさったような匂いがどこかから漂ってきては、「なんだか北欧っぽいな〜」と思っていた。その頃は北欧を訪れた経験がなかったから、ショーケースを見て、たとえオープンサンドを見つけても、いまのように彼の地で食べた味を思い出すには至らなかったはずだ。


去年、イラストレーターのイザベル・ボワノさんが出演する&Premiumの撮影で、しばらくぶりに『フィカ』へ行くことになった。それが朝だったことがきっかけで、午前中の静かな時間に改めて再訪したくなった。そのままランチもするつもりで出かけると、11時を過ぎてショーケースに並び始めたオープンサンドの一つに、おぉ!と目が惹きつけられた。黒パンにニシンが盛られている。迷わずそれにした。食べてみて、「そうだった、そうだった!甘いんだった!」と思い出した。酸っぱさよりも甘さが優っていると感じるニシンのマリネにディルが香り、ボソボソした黒パンがよく合う。これがもし、しっとりしたパンだったら、全体的にもったりした印象になるのではないかと思う。東南アジアやインド料理を日本の白米で食べるような。

