神保町での打ち合わせの帰りに、すずらん通りにある小諸そばに寄った。ついでに、ここで2000円分食べてこの連載のネタにしようという目論見もあった。
ところが、食券機の前で立ち尽くしてしまう。かけそば410円、親子丼セット800円、天丼550円……。いくらそば屋とはいえ、この物価高の時代にひとつひとつのメニューが安すぎる。そばの二枚盛り(2人前)ですらプラス70円だ。

◆思ったより安くて戸惑う
これまであまり小諸そばで食事をしてこなかったこともあり、そのリーズナブルさを知らなかった自分を恥じたい。結局この日は、もりそば二枚盛りとヒレカツ丼で1000円ちょっとだった。悔しい。ヘモグロビンA1cが11、血糖値は常に400超え。ヘソから下の肌がインシュリンの注射痕で赤くなっている球体のような体型をしている筆者にしてみれば、完全敗北のようなものだ。なにが「『チェーン飯』を2000円で爆食い」だ。
この日から、筆者の頭の中は常に小諸そばのことでいっぱいだった。スマートフォンでメニュー表の写真を撮り、暇さえあれば最善の組み合わせを考えていた。
そして、この連載はあくまでも「どれだけおいしい組み合わせを2000円で実現できるか」が目的であって、ただ食い意地を張りたいわけではない。そこで「その時」に備えて何度も都内の小諸そばに通い、さまざまなメニューを試した。毎回、行き当たりばったりで注文しているわけではないのだ。
◆4人席で3人前をかっ食らう

ひとりで入店したのであればカウンター席に座るのが礼儀だが、それなりの量を頼むことがわかっているため、4人席を陣取った。
考え抜いた末に注文したのは、かき揚げせいろ(520円)の二枚盛り(70円)を2つ、親子丼(590円)、そしてえび天(170円)で、合計1940円。
要するに、3人前をひとりで食べるようなものだ。食券が6枚出てきたため、店員に「お客さん、間違えて2回押しちゃったね。かき揚げせいろ、1枚キャンセルしようか?」と言われたが、はっきりとした口調で「間違っていません」と言った。当然だが、店員は困惑した表情を浮かべていた。

