
二世帯住宅は親世帯と子世帯の距離が近いだけに、複雑な感情を抱きやすいもの。同居してくれた嫁や孫を気遣うばかりに自分の晩年の人生を謳歌できずに後悔する姑や、二世帯住宅の“うまみ”を狙ってあぐらをかく嫁もいるようで――。事例をもとに、「二世帯住宅」で起きがちな相続トラブルをみていきましょう。
“念願の二世帯住宅”のはずが…姑の誤算
遡ること20年前。サワコさん(仮名)は58歳のとき、息子夫婦と一緒に暮らすため、完全分離型の二世帯住宅を建てました。1階がサワコさん夫婦、2階が息子のコウジさん(仮名・当時29歳)と同い年の妻・チナミさん(仮名)、リオちゃん(仮名・当時1歳)の住居です。
サワコさん夫婦は長年息子夫婦と同居することを夢見ていたことから、大喜び。息子のコウジさんも、「プライベートも確保できるし、いい距離感で過ごせそう」と満足気でした。
しかし……。
コウジさんとチナミさんは共働きで、上昇志向が強いチナミさんは出産後わずか半年で職場復帰することに。あいにく保育園に空きがなかったことから、困ったチナミさんは義母であるサワコさんに子の世話を頼み込みました。
サワコさんも、「かわいい孫のためなら」と快諾し、それからは朝8時前から19時過ぎまで、平日週5日孫の世話をする毎日が始まりました。
息つく暇もないほどの忙しさに疲弊も、ヒートアップする“おねだり”
しかし、サワコさんにとっては30年ぶりの育児。すぐに孫かわいさだけでは済まされないことに気がつきましたが、もう後戻りはできません。
2年後に2人目の孫が誕生すると、その忙しさは息つく暇もないほどになりました。
何度か孫の世話の大変さを訴え、「世話する時間を減らせないか」「保育園はまだ見つからないのか」と恐る恐る尋ねますが、チナミさんは「私、忙しいのでなかなか……」と流されてしまいます。
「ようやく保育園を見つけた」と聞いたときは、ついに解放されると思ったサワコさんでしたが、預けているあいだの束の間の自由時間はあっという間に過ぎ、午後には幼稚園のお迎えと習い事の送迎が待っています。
「息子家族の力になりたい」と身を粉にして頑張っていたサワコさん夫婦でしたが、チナミさんは感謝するどころか、徐々に「やってもらって当たり前」という態度に。そのうち子育てだけでなく、自分たちの家事までもサワコさんに頼むようになっていきました。
「忙しくて、お風呂を洗う時間がないんですよ」「お義母さん宅のゴミと一緒に、うちのゴミも出しておいてもらえませんか?」
人のいいサワコさんは、なかなかはっきり「嫌」と言えず、その後も「仕方ない、仕方ない」と、嫁と孫に尽くしてきました。
長年の疲弊の末…
日は流れ、孫たちも大学生と高校生になりました。「やっと自分の時間が持てる」と思っていた矢先、サワコさんの夫(享年76歳)が急逝。悲しみに暮れるサワコさんでしたが、チナミさんや孫たちからは、あまり悲しそうな素振りが見えません。
「不満ひとつ言わずにあんたたちを育ててきたのに、その態度はあんまりだ」
深い悲しみと長年の疲れが重なったのか、長年の持病が悪化。サワコさんも夫の後を追うように、静かに息を引き取ったそうです。
