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「肩書き」がなくなったとき、自分にはなにが残るのか?…給与減は“序の口”。「役職定年」で50代が直面する〈悲しい現実〉【公認会計士が解説】

「肩書き」がなくなったとき、自分にはなにが残るのか?…給与減は“序の口”。「役職定年」で50代が直面する〈悲しい現実〉【公認会計士が解説】

50代になると現実味を帯びてくる「役職定年」は、給与の減少だけでなく、退職金や今後のキャリアの選択肢、さらには自身のアイデンティティにまで影響を及ぼすきわめて重要なタイミングといえます。そこで本記事では、役職定年がもたらす影響と、その先に備えるための具体的な戦略についてみていきましょう。公認会計士・岸田康雄氏が解説します。

役職定年が奪うものは「お金」だけではない

役職定年と聞いて、多くの人がまず思い浮かべるのは「給与減」でしょう。

実際、年収が20%〜多いところで50%減少するケースも珍しくなく、リクルートマネジメントソリューションズ(RMS)の独自調査によると、約53%が10%〜30%の減収を経験していることがわかっています。給与が減る主な理由は、次の2点です。

1.「役職手当」の消滅

月額5万〜20万円の役職手当がなくなることで、年間60万円〜240万円の減収になります。

2.「賞与(ボーナス)」算定基準の変更

役職定年をきっかけに、評価区分が「管理職」から「専門職」などに変わり、支給月数が下がるケースが一般的です。

たとえば、55歳で年収1,200万円から800万円に下がった場合、65歳までの10年間で失われる収入は、単純計算で約4,000万円にのぼります。このように、給与減による長期的な収入の目減りは、その後の人生に大きな影響を与えます。

さらに見逃せないのが「退職金への影響」です。退職金を「退職時の基本給」を基準に算定する企業では、役職定年後の低い給与水準が反映され、想定より大幅に減額される可能性があります。

近年は「ポイント制退職金」を導入する企業も増えていますが、制度によっては役職定年前後の評価やポイント付与が大きく変わる場合もあります。まずは自社の制度を正確に把握することが重要です。

お金以上に深刻な「心理的ダメージ」

経済的な影響以上に深刻なのが、心理面へのダメージです。

長年、組織の意思決定を担ってきた管理職にとって、肩書きと権限を失うことは、自己肯定感の低下や無力感につながりやすく、心理学ではこれを「役割喪失(Role Loss)」と呼びます。

多くの人は次の3つの段階をたどるといわれています。

第1段階:拒絶・憤り

「なぜ自分が」「まだやれるはずだ」といった強い不満や抵抗感が生じる段階です。

第2段階:抑うつ・無関心

モチベーションが落ち、生産性も低下。特に、元部下が上司になる「逆転現象」や、周囲の過度な気遣いが疎外感を強めます。

第3段階:適応・再定義

肩書きに依存しない自分の価値を見出し、新たな役割へ移行していく段階です。

同調査によると、年収が変わらなかった人でも約24%がモチベーション低下を経験していることがわかっています。これは、問題の本質が「お金ではない」ことを示しています。

役職定年は“時代遅れ”か…進む「制度廃止」

そもそも役職定年とは、組織の若返りや人件費の抑制を目的に導入されたものです。しかし現在では、その前提そのものが崩れつつあります。

実際、日立製作所や富士通、三菱ケミカルなど、複数の大手企業が制度の見直しや廃止に踏み切っています。この背景には、次の3つの大きな変化があると考えられます。

1.「人的資本経営」の浸透

年齢を理由に一律でポストを外すことは、企業の競争力を損なうという考え方が広がっています。

2.「ジョブ型雇用」への移行

役割と成果で評価する仕組みでは、「年齢での降格」は合理性を持ちません。

3.深刻な人手不足

経験豊富な50代・60代は、企業にとって貴重な戦力です。意欲低下や流出を招く制度は、むしろリスクとなります。

役職定年は、「時代の変化に合わない制度」になりつつあります。

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