
アメリカに住む日本人として、この上なくうれしいことだが、日本人の活躍を素直に喜ぶ気にはなれない。日本人選手が、人気低迷にあえぐアメリカプロ野球界の穴埋めに使われているようにしか見えないからだ。
◆「好きなスポーツ」で野球は10%……長期の人気低迷にあえぐ米野球
大リーグを含めたアメリカの野球は、長期の人気低迷にあえいでいる。調査会社ギャラップは1937年以降、不定期でアメリカ人の最も好きなスポーツについての調査を続けている。野球は’60年代まで、アメリカを代表するスポーツとして圧倒的な人気を博していたものの、’72年の調査でアメリカンフットボールに首位を奪われ、その後、人気低迷の一途をたどった。’90年には「万年3位」といわれたバスケットボールとほぼ同じぐらいの人気度にまで落ち込み、その後は団子状態で2位争いを続けている。最新の’23年の調査では、「好きなスポーツ」で野球を選んだアメリカ人は10%にまで落ち込み、41%のアメリカンフットボールは雲の上の存在となっている。米大リーグ機構(MLB)の人気度を示す指標で最もわかりやすいのは、アメリカンリーグとナショナルリーグの優勝チームが激突する「ワールドシリーズ」の視聴率だ。’25年は第7戦までもつれ込むかつてない盛り上がりを見せたにもかかわらず、視聴率は歴代ワースト5に入るレベルだった。
観客動員数もさえない。MLBは昨シーズン終了後、3シーズン連続で観客動員数が増加したと胸を張って報道発表したが、過去最高となった’07年の7948万人には遠く及ばない7141万人にとどまった。
◆「野球離れ」を食い止めるために使われる日本人選手
そんな中、大谷らが所属するドジャースはMLB史上初めて、球団の総収益が10億ドル(約1590億円)を突破した。パートナー企業76社のうち20社が日本企業で、放映権も高く売れ、ジャパンマネーが高収益の原動力となった。村上を迎え入れたホワイトソックスのブルックス・ボイヤー副社長はアメリカメディアのインタビューに「日本企業と提携して、日本のファンに村上がプレーする姿を見てもらいたい。日本のファンが応援したくなるような野球を提供できれば、スポンサー獲得や知名度の向上につながるだろう」と語り、日本に大きな期待を寄せた。
日本人が買い求める大リーググッズもばかにはできない。’25年のドジャースの開幕戦は日本で行われたが「東京シリーズ」と名付けられたカブスとの公式戦ではグッズ売り上げは59億円にものぼった。円安をものともせずに、アメリカに大リーグ観戦に来る日本人は多い。シーズンを通じ日本人にいかにグッズを売り込むかは、MLBの重要な経営課題だ。
現在のMLBは、自国アメリカでの野球離れを食い止められず、その穴を日本人選手の活躍と、それを見る日本人で埋め、そこから生まれるジャパンマネーに活路を見出そうとしている。

