
定年退職を機に、退職金を使って地方の築40年木造アパートを購入したシゲルさん(60歳・男性)。「これからは不労所得で最高の老後だ」と豪語し、妻の反対を押し切ってまで大家業をスタートさせます。最初の数ヵ月こそ満室で順調だったものの、翌年の春、思いもよらない「ある発表」を機に状況は一変。業者の甘い言葉を鵜呑みにした結果、休む間もなく働き続ける羽目になったシニア夫婦の過酷な現実と後悔を紹介します。
「最高の老後だよ」退職金2,000万円を“不労所得”の夢につぎ込んだ60歳夫
「これからは大家として不労所得で生きていく。毎月何もしなくても家賃収入が入ってくるんだから、最高の老後だよ」
長年勤めた会社を定年退職したシゲルさん(仮名・60歳)は、不動産業者の営業マンが持ってきたシミュレーション資料を手に、すっかり舞い上がっていました。
妻のシズエさん(仮名・59歳)は「そんなうまい話があるわけない」と止めましたが、シゲルさんは聞く耳を持ちませんでした。
シゲルさんは手にした退職金2,000万円のうち1,500万円を頭金と諸経費に充て、地方にある3,000万円の築40年の木造アパートを一棟購入しました。残りの購入資金1,500万円は銀行からの借り入れです。
手元に残った老後資金は、退職金の残り500万円と、夫婦でコツコツ貯めてきた預金800万円を合わせた1,300万円。
「業者は『大学が近くにあるから学生の需要がずっとあります。家賃収入でローンの返済は完全にカバーできるから、実質的な負担はありませんよ』と説明してくれました。実際に最初の数ヵ月は満室で、自分の決断は正しかったと確信していました」
しかし、その平穏な日々は長続きしませんでした。
「毎月赤字です…」空室と高額な修繕費に震え、深夜の警備員バイトへ
翌年の春、近くの大学が「キャンパスの一部を移転する」と発表したのです。それを機に学生の退去が相次ぎ、10室あった部屋の半分以上が空室になってしまいました。
新たな入居者を募集しようにも、築40年という古さがネックとなり、家賃を下げなければ見向きもされません。それどころか、築古の木造物件ならではの致命的なトラブルがシゲルさんを襲います。
「外見は綺麗でも、建物の内側がボロボロだったんです。雨漏りがしてカビが生え、床下からはシロアリの被害も……。そのたびに何百万円という修繕費の請求が来ました。不労所得どころか、毎月赤字です……」
家賃収入は減っているのに、銀行へのローン返済と管理会社への手数料の支払いは続いていきます。空室とローン返済による赤字が家計を圧迫。不足分は手元の貯金1,300万円から取り崩すしかなく、あっという間に老後の生活資金は半分以下になりました。
「ローンを返すために、深夜の警備員のアルバイトを始めました。昼夜逆転の生活で疲れ果て、家では話す気力もありません」
シズエさんは、シゲルさんがいない昼間の時間帯にスーパーのレジ打ちパートに出て生活費を稼いでいます。
「老後は夫婦で温泉旅行にでも行こうと話していたのに……。業者の甘い言葉を信じて、退職金を投資につぎ込んでしまったことを夫婦で後悔しています」
