高齢期の「収入のための労働」の実態
内閣府の「令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査結果」によると、現在の経済的な暮らし向きについて「家計にゆとりがなく、多少心配である」または「家計が苦しく、非常に心配である」と答えた人は、全体の30.7%にのぼります。
見通しの甘い投資の失敗などによって老後資金が減少すると、シゲルさん夫婦のように日々の生活費やローン返済に追われることになるでしょう。実際に同調査でも、日常生活において収入より支出が多くなり、これまでの預貯金を取り崩してまかなうことが「よくある」「時々ある」と答えた人は全体の61.2%を占めており、多くのシニアが老後資金を徐々に減らしていることがわかります。
こうした経済的な余裕のなさは、高齢期の働き方や労働負担にも直結します。収入を伴う仕事をしている主な理由として「収入のため」を挙げる人は全体で55.1%ですが、暮らし向きが「家計が苦しく、非常に心配である」人に限ると、その割合は74.0%にまで跳ね上がります。
さらに、家計が苦しい層ほど労働日数や時間が長くなる実態も、データでは浮き彫りになっています。「家計が苦しく、非常に心配である」人の68.5%が週に「5日以上」働いており、働く理由が「収入のため」である人の1週間あたりの平均就業時間は32.7時間と、就業者全体の平均(29.6時間)を上回っています。
シゲルさんがローン返済のために深夜の警備員アルバイトを始め、疲労困憊しているように、退職金の大半を失ってしまうと、高齢になっても休む間もなく体力的な負担の大きい労働を余儀なくされるリスクがあります。「不労所得」という言葉に、安易に飛びつくのではなく、最悪のリスクも想定した慎重な資金計画が求められるでしょう。
[参考資料]内閣府「令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査結果」
