◆教育が凶器となった悲劇的な事件も
——そのプレッシャーが、悲劇的な事件も引き起こしているそうですね。スンジュン:2011年に起きた「高3男子による母親殺害事件」は、韓国社会の闇を象徴していましたね。当時高校3年生だった少年は母親から「ソウル大学への進学」を強要され、成績が下がるとバットなどで200回以上殴られるといった凄惨な虐待を受けていました。命の危険を感じた少年は母親を刺殺し、その後、遺体を自室に放置したまま8ヶ月間も学校に通い続けたのです。被害があった家庭では、教育が「凶器」になっていたのです。
——特権階級の不正も、国民の怒りに火をつけましたね。
スンジュン:2019年の「チョ・グク事件」も衝撃でした。特権階級がコネを駆使して経歴を偽造し、医学専門大学院に入学させていたのです。一般の受験生が1点を争っている裏で、上級国民が「裏ルート」を使っていた。この不公平さが、若者たちの心を完全に折りました。
◆なぜ韓国人は医学部に執着するのか
——最近は「医学部」への執着がさらに加速しているそうですね。スンジュン:今の韓国は、まさに「医学部宗教」です。2024年度の浪人生の割合は35.3%と過去最高水準。すでに名門大学に入学している学生が、中退してまで医学部を目指す「半浪(仮面浪人)」が激増しています。私の同級生も3分の1は半浪して医学部や他校に編入していきました。大企業に入っても安泰ではない韓国では、定年がない医師免許こそが唯一の「生存チケット」だと信じられているんです。

