50歳過ぎからの働き方あまやかし方
2022年、美賀さんはnoteに次のように綴った。
「自分にとって本当に必要なものがクリアになって、これからの楽しい妄想もどんどん膨らんでくる。
50歳を目前に、まだまだやりたいことタスクは増えるばかり!」
コロナでリセットした月の店はやりがいがあり過ぎて、「100%ではなくて、1000%!」で働く
毎日を謳歌していた。しかし、ついに2024年の年末年始に疲労とストレスで帯状疱疹を発症。帯
状疱疹が治った後には、蕁麻疹になってしまった。
「あまやかしの時間」を周りに発信しながら、差し出すものが多過ぎて、自分へのあまやかしがおろそかになっていたのかもしれない。当然、50歳を過ぎればこれまでのような働き方はもちろん、あまやかしの仕方も変える必要があるのだろう。そのサインが、定評のある透明感のある白い肌に現れた。
「思えばずっとがむしゃらに働いてきたので、立ち止まるよいきっかけになりました。コロナ以降は自分の好きなやり方で仕事ができて、ちょー楽しかったんですが、帯状疱疹の時は冬眠のように1か月店を休んで、心と体に向き合いました。それが、本気で本音のあまやかし時間の始まりでした」
これまで病気らしい病気をしたことがなく、年を重ねてますます元気になったと自他ともに認めていた。しかし、自称「宇宙人」(笑)の人だって、50年生きれば50歳だ。
帯状疱疹を機に「ちょっとゆっくりしよう、そんなに頑張らないで」と、いわゆる男性的な働き方から
女性的な働き方にシフトした。そして2025年の後半には、約5年間書いてきたnoteを一旦休止。また、カフェのおひとりさま限定完全予約制をゆるくした。
二人連れもOKで、席が空いていれば予約なしで喫茶できるようにも変えた。
「お客様がお店でリラックスしてくれているのがうれしいです」。
最初にハーブティーで体を温めてもらった後、コーヒーなどの飲み物と月ごとのお菓子のセットをサーブする。お菓子はもちろん美賀さんのお手製。
1000%をやめた途端何かがやってくる?
「朝はゆっくりスキンケアの時間を取っています。南側の朝日が当たる小さなテーブルで、手の届くところにいろいろ置いて、お香を焚いて、白湯やコーヒーを飲んでのんびりしてます」
その同じテーブルで、一年前から絵を描きはじめた。
「子どもの頃から、絵の具や色鉛筆の色を見るのが好きでした。デザイナーさんが持っているパントーンとか永遠に見てられますね」
そんな美賀さんが描いたのはまさに色と色が響き合う絵。花園のような夢のような、ふんわり、まあるい、彩りのブーケ。その絵はお香のパッケージやスカーフ、カレンダーになって店の輪郭をやわらかくしている。まるで未来の空気を祝福するかのように。これからの美賀さんはどこに行くのだろうか。
「自分の好きなものに共感してくれる方たちとつながる場所を提供していきたいですね。喫茶だけでなく、オリジナルプロダクトや、旅で見つけたものも紹介したいです」
でもこれまでのような1000%で頑張るということではないらしい。
「ふと気づくとずっとパートナーがいないんですよね。ひとりの時間は大切なんですが、ただひとりで頑張るのではなくて、そろそろ誰かと一緒にいるのもいいなあと思っています」
〜私を支えるもの〜
ヨーロッパ旅行で出合ったものたち。
慌ただしい日々をリセットするのは、昔から旅をすることだそう。
「海外には誰も知った人がいないし、言葉も通じなくてハラハラドキドキして、脳が活性化されます。思い入れがある国はフランスですが、2025年はイタリアやイギリスなどに行きました。
この数年は推しからパワーをもらうために渡韓することもとても増えました」
数年前にパリ出張の休日にリュクサンブール公園に行った時、BTS好きの後輩から「このベンチにテテが座った!」と教えられ、同じポーズで記念撮影。
その晩に、MVやインスタを見て、急に沼落ちしたんだそう。今では「泣いたり笑ったりの感情を全部引き出してくれる」、毎日の暮らしに欠かせない大切な存在になっている。
「いつもせわしなく仕事のことばかり考えているので、お香の薫りを感じながら、白い糸のような
煙が立つ空間にいると無になれます。瞑想ってできないと思っていたのですが、お香を焚いて過ごす時間がそうかもしれないですね」。
店でも販売している東京香堂と作ったお香は、ただの癒しでなく、上を向いてほしいという願いを込めて調香した。「これからの時代は、イメージしたら現実化がどんどん加速すると思っているので、『imaginer le PARFUM』と名付けました」
Instagramアカウント: @ tokyokodo_ jp
聞き手:石田紀佳さん
手仕事と自然に関わる人の営みを探求するキュレーター。朝日カルチャーセンターなどで季節の手仕事講座を開催。池尻にオープンしたホームワークヴィレッジにて植栽管理。
村の庭ブログ:https://homeworkvillagegarden.blogspot.com/
撮影/白井裕介 聞き手・文/石田紀佳 編集/鈴木香里
※大人のおしゃれ手帖2026年4月号から抜粋
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