解雇されても路頭に迷わない仕組み
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アメリカではレイオフ自体はよくあることで、通達されるタイミングはさまざまです。
フィンテック系の大企業に勤務していた筆者の友人も今年の3月にレイオフの対象となりました。2週間前に突然通達されたそうです。一方、その日の朝に通達されるケースもあります。この春、数千人規模のレイオフが伝えられるオラクルは、朝6時に「今日が最終日」と通達メールを対象者に配信したと報じられています。
レイオフが珍しくないアメリカで、大企業の従業員が失職してもそれほど慌てることがないのは、企業側が手厚い「退職パッケージ」を用意するからです。
筆者が以前取材した、米ツイッター(現X)の社員は、レイオフによって退職金および、2ヵ月間の給料と健康保険を受け取り、「金銭的な心配はなかった」と話していました。またアメリカのレイオフ文化について「優秀な人材が市場に放出されるので、業界には良いこととして捉えられている」とも言っていました。
前述の筆者の友人も、退職パッケージと在職中の貯金のおかげで「向こう2年くらいは無職でも生活できそう」とのこと。心に余裕を持ちながら次の人生を考えたいと話していました。
フィンテックのBlock(Squareアプリの会社)も2月、共同創業者のジャック・ドーシー氏(ツイッターの創業者)がXで、「もっとも困難な決断の一つを下すことになった」と前置きした上で、全社員約1万人の4割にあたる約4000人のレイオフを発表しました。
同氏はXで退職パッケージにも触れています。内容は「20週間分の給与に加え、在籍年数1年ごとに1週間分の給与、さらに5月末日までに確定する株式報酬、6ヵ月間の医療保険、業務で使用していたデバイス、そして5000ドル(約80万円)を提供する」というものです(内容はアメリカ国内居住者向け。国外居住者にはこれに準じた支援)。再就職費用や引越し、生活費などに充てることができる潤沢な退職パッケージだと思います。
企業への帰属意識よりも個人のキャリア形成を重視する傾向があるため、日本のように終身雇用は当たり前ではなく、生え抜き社員にそれほどこだわらないのがアメリカの雇用環境の特徴と言えます。大規模なレイオフは確かにショックなことですが、退職者向けのパッケージが非常に手厚いというのも、米大企業の特徴と言えるでしょう。このような退職後のサポートにより企業側は思い切った解雇に踏み切れ、対象者は心に余裕を持ちながら次の人生設計に向き合えるのでしょう(ただし、こうした手厚いパッケージは“解雇”という厳しい現実と表裏一体でもあるわけですが)。
また、AI投資の拡大と並行して進む人員削減について、「一見するとロボットによる仕事の終末論のように思えるかもしれないが、実際はそうではない」と、米ビジネスインサイダーは伝えます。テクノロジー企業が正社員の雇用を削減しているのは事実ですが、専門家によれば、一部の従業員は契約社員として再雇用される動きもあるそうで、完全な“置き換え”とは言い切れません。
AIによる効率化が背景要因の一つと指摘されているレイオフのニュースは、AIの進化と共に今後も続いていきそうです。