◆「相手にとってどうか」という視点が重要
しばらくして、車内を巡回していた車掌がその場に差し掛かった。後方の年配男性が事情を説明すると、車掌は静かに男性へ注意を促した。男性は舌打ちをしながらも、デッキへと移動していった。物語はそこで終わらなかった。到着駅でその男性が降りる際、足元に置いていた荷物につまずき、手に持っていた空き缶を落としてしまったのだ。
缶は周囲に転がり、男性は慌ててそれを拾う。その滑稽な姿に、周囲から冷ややかな視線が集まっていたという……。
山川さんは、その一連の光景をこう総括する。
「公共の場では、少しの配慮がどれほど大切かを改めて実感しました」
イヤホンを使わずに動画を再生すること、座席での通話、後方確認なしのリクライニング。いずれも「法律で禁止されているわけではない」行為かもしれない。しかし新幹線という空間では、それぞれの行為が積み重なることで、周囲の乗客の快適さを著しく損なう。法律やマナー、ルール違反かどうかではなく、「相手にとってどうか」という視点が重要なのだ。
<文/藤山ムツキ>
【藤山ムツキ】
編集者・ライター・旅行作家。取材や執筆、原稿整理、コンビニへの買い出しから芸能人のゴーストライターまで、メディアまわりの超“何でも屋”です。著書に『海外アングラ旅行』『実録!いかがわしい経験をしまくってみました』『10ドルの夜景』など。執筆協力に『旅の賢人たちがつくった海外旅行最強ナビ』シリーズほか多数。X(旧Twitter):@gold_gogogo

