預貯金中心の資産保有に見る「課題」
ここで、もうひとつ重要な論点があります。それは、資産の保有方法です。
多くの経営者は、現預金として資産を保持し、必要に応じて投資するというスタイルを取っていると思われます。しかし、この戦略には2つのリスクがあります。
①実質的な資産価値の目減り
インフレ環境下においては、現預金は実質的に価値が減少します。仮に年2%のインフレが続いた場合、10年で資産価値は約20%目減りする計算です。
②課税タイミングの集中
現預金は「課税を繰り延べている状態」に過ぎません。
将来的には「配当として取り出す」、あるいは「投資に回して利益を得る」といったタイミングで、まとめて課税される可能性があります。特に金融所得課税が強化された場合、その時点での税率が適用されるため、結果として高い税率で一気に課税されることも考えられます。
経営者が取るべき基本スタンスとは?
金融所得課税の留意すべき点として、個人レベルでのコントロールの難しさが挙げられます。
法人であれば、経費計上や投資タイミングの調整、事業構造の見直しといった対応が可能です。一方で、個人課税については税率のコントロールはできず、さらには制度変更の影響を直接受けることになります。
そのことから、重要になるのは「どのようにして影響を抑制するか」という視点であり、こうした環境下で求められるのは、短期的な節税ではなく、中長期的な戦略だといえるでしょう。
具体的には、
●資産の分散(現預金・金融資産・事業投資)
●回収タイミングの分散
●法人と個人のバランス設計
といった観点で、全体最適を図る必要があります。重要なのは、「税率が変わる前提」で意思決定を行うことです。
税制は固定ではなく、常に変化します。その前提を織り込まずに資産形成を行うこと自体がリスクになります。
