◆日本の企業から失われた教育機関としての役割り

罪悪感が薄れた職場で、会社のリソースを“自分のもの”として使う行為は、もはや不正という意識すら伴わない。そこへ副業解禁の潮流が重なることで、企業資産の流出はさらに加速する。
「かつてはGPU負荷をサーバーの何パーセント以内と設定すれば発覚しにくかったので、就業中にビットコインのマイニングで小銭を稼ぐケースがあった。近年はさらに進んで、AI学習に置き換わりつつあります。副業で使う知識やスキルも大半は、在籍企業で培われたもの。本人に悪意がなくても、会社が育てた人材と知見が外に流れていくことは、企業資産の流出にほかなりません」(三上氏)
さらに深刻なのが、企業の存在そのものを揺るがす「機密情報の漏洩・データ改ざん」(1%)だ。
「信頼していた上司が退職直前、顧客名簿をUSBにコピー。そのままライバル関係にある転職先へ持っていき、顧客から『お宅の元上司から営業電話が来た』と連絡があったことで発覚。会社への恩義より、次の職場での評価を優先する冷徹さにあきれた」(38歳・広告)
三上氏は現場の闇を明かす。
「最も不正が発生しやすいのは転職・離職など会社を離れるタイミング。ある調査では、機密情報を持ち出した犯人の約45%が転職者というデータもある。彼らにとって機密情報は次の会社での地位を確約させる『手土産』にすぎないのです」
◆モラル崩壊が進んだ背景は…
なぜ、ここまでモラル崩壊が進んだのか。その背景には、歪な労働構造があると三上氏。「賃金と裁量が見合っていないことが根本的な問題です。スキルへの対価を支払う意識が薄い日本では、成果報酬制も実態はコストカットの隠れ蓑。派遣社員や外部委託に会社の中枢業務を任せながら、報酬は据え置きというケースも珍しくない。低賃金で酷使される日々を送るなかで、目の前に『宝の山(データ)』が転がっていれば、不正がなくなるわけがありません」
そして近い将来、不良社員たちは“最強の共犯者”を手に入れようとしている。三上氏が警鐘を鳴らすのが、AIエージェントの悪用だ。
「劇的に人間の能力が向上する半面、リスクも甚大になる。AIエージェントが分身として動くということは、与えられた個人情報やパスワード・アクセス権限がそのまま悪用される可能性を意味します。会社のサーバーやクレカ情報をひも付けることで、深夜に全自動で社内情報を抜き取ったり、面接ですらリモートで行われる今はAIエージェントを社員として競合他社に潜り込ませたりすることも起こるかもしれません」
冷めた合理主義と、最新テクノロジーの悪魔的合体を止めることは、もはや不可能だ。

