子どもたちが楽しみながら科学を知るワークショップを企画
現在アデラさんは、サイエンスコミュニケーターとして、F-REIでの研究成果を外部に発信し、科学への関心を広げる仕事に従事しています。研究論文を報道向けの資料(プレスリリース)へと編集する作業は、これまでの経験が大きく活きています。
「プレスリリースの作成では、英語の論文を日本語に訳するだけでなく、よりわかりやすく、かつ成果の魅力を伝える必要があります。まだまだ日本語が完ぺきではないので難しさもありますが、皆さんに協力してもらいながら頑張っています」
また、イベントや学校の授業などを通じてF-REIの研究活動を地域の人々に発信する活動にも携わっています。子どもに科学の楽しさを伝える体験イベントでは、これまで浪江町や富岡町、福島市や郡山市、いわき市などに出向き、科学の魅力を楽しみながら感じてもらえるよう、さまざまな工夫を凝らしたワークショップを実施してきました。

ワークショップでマシュマロタワーのつくりかたを子ども達にレクチャーするアデラさん(F-REI提供)
「研究は失敗があるのが当然で、失敗を怖がらないで自分のアイディアを試すことが、研究者にとって大事なスキルとなります。将来F-REIの研究者になるかもしれない子ども達には、そのことを伝えたいと思ってワークショップを企画しています。
先日は、ゆでる前のスパゲティとマシュマロを使ってタワーを作るワークショップをしました。高いタワーを作るためには、どんな形だといいのか。どうすれば倒れにくいのか。間違っていてもいいので、自分でそれを考え、試してもらいました。自分で考えた作り方で失敗すれば、何かに気付くじゃないですか。そのトライ&エラーの大切さを学んでほしいと思っています」
福島で生活している人たちの役に立ちたい
F-REIが手がける研究のなかには、原子力災害や放射線にまつわるテーマも含まれます。こうしたテーマは福島ならではのテーマであり、アデラさんもその独自性がF-REIの存在意義のひとつだと考えています。
「福島には福島の課題があって、同じ研究だとしても、ここでやるから意味があるのだと思います。震災や原発事故という背景をもつ地域だからこそ、現実に基づいた研究が求められると思いますし、サイエンスコミュニケーターとしてその役割に関われることにやりがいを感じています」

F-REIに来てまもなく1年が経ち、福島での生活にも慣れてきたアデラさん。インドネシアでは1年を通して日の出や日の入の時間がほとんど変わらないため、季節によって明るくなる時間が変わる日本での暮らしに最初は戸惑ったそうですが、「今は太陽と一緒に生活しています」と笑います。休日は仙台まで買い物に出かけたり、南相馬市の図書館で静かに読書の時間を過ごしたり、福島市にある福島県国際交流協会が企画するイベントに参加したりしているそうです。
登山にも興味をもち、F-REIの仲間と安達太良山など福島県内の山にも登っているというアデラさん。車の免許をもっていないアデラさんにとって福島での生活は決して便利ではありませんが、それでも「この地に残りたい」と思う理由を、目を潤ませながら教えてくれました。
「買い物に行くと、お店の方から“どこから来たの?”とか“どんな仕事をしてるの?”とよく聞かれます。自分のことを話すと、皆さん必ず“がんばってね”と応援してくれるんです。すごくうれしいし、感動します。私も、ここで生活する皆さんの役に立ちたい。地域の方のために働けるよう、私にできることを探していきたいです」

