
内閣府の調査によると、高齢者の約7割が現在の暮らしに「心配ない」と答え、手厚い年金制度に支えられている実態が明らかになっています。一方で、現役世代のなかには賃上げの恩恵を受けられず苦境に立たされている人も少なくありません。地方都市で実家暮らしをする28歳のシンジさんは、手取り18万円で必死に働きながら毎月5万円を親に渡しています。しかし正月に、年金暮らしの父親に「たかが5万円で……。GWまでに出て行け!」と非情な宣告を受けた、20代の若者の苦悩に迫ります。
高齢者の約7割が「生活に心配なし」…データが示す“世代間のお金のズレ”
内閣府の「令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査結果」を見ると、親世代の経済的な余裕が客観的なデータとして表れています。同調査において、現在の経済的な暮らし向きについて「心配なく暮らしている」と回答した高齢者は全体で65.9%でした。現在、配偶者がいる層に限れば7割が強い安定感を示しています。
また、現在の収入源として「公的年金」を挙げた人は75.7%に達しており、手厚い年金制度に支えられた高齢者世帯の多くが、家計に一定のゆとりを持っていることがわかります。一方で、現役世代のなかには、社会全体の賃上げムードの恩恵を受けられず、社会保険料の負担増や物価高によって可処分所得が伸び悩んでいる層も確実に存在します。
さらに、同調査で「自身が50代のころの働く様子」について高齢者に尋ねたところ、「働きぶりは、会社や同僚から高く評価されていた(36.2%)」、「経験を積んだ仕事で力を発揮していた(35.5%)」、「同じ仕事を続けるつもりでいた(33.7%)」といった回答が上位を占めました。
終身雇用や年功序列が機能し、真面目に働けば評価され収入が上がる時代を生きてきた親世代には、現代の若者が直面する「努力しても報われにくい労働環境」や「生きづらさ」が理解しにくいという実態がうかがえます。
このような背景から、子世代にとっての「精一杯の生活費」と、年金で安定した暮らしを送る親世代にとっての「わずかな金額」という、埋めようのない経済感覚や労働観のズレが生じてしまいます。親世代からすれば持ち家を提供して同居させてやっているという意識が働きやすく、子世代は経済的に自立できていないという負い目を抱えやすくなります。
世代間の経済的な実態の違いを互いに理解し、同居にかかる実際のコストや生活費の分担について、感情的にならずに客観的な数字で話し合うことが、親子の断絶を防ぐためには必要です。
実際に、この「世代間のズレ」から家族の亀裂を生んでしまった事例を見てみましょう。
手取り18万円・実家暮らし28歳男性…両親に渡す「毎月5万円」
「毎月きちんと生活費を家に入れているのに。なんであんな言葉を……」
地方都市の実家で両親と暮らすシンジさん(仮名・28歳)は、正月に起きた父親との出来事について振り返ります。
シンジさんは人と話すのがあまり得意ではなく、就職活動で大きくつまずいてしまいました。それでも「自立しなければ」と地元の企業になんとか就職し、真面目に働いています。しかし給与水準は低く、手取り月収は約18万円。
昨今の物価高の影響もあり、一人暮らしをするには経済的な負担が大きいため、実家に留まる選択をしました。その代わり、社会人としてのケジメとして、毎月5万円を生活費として両親に渡しています。
手元には13万円が残りますが、そこから毎月2万円の「奨学金の返済」が引かれます。さらに地方での通勤に必須な「車のローン」と、ガソリン代や任意保険料などの維持費で5万円以上が消えていきます。それに毎月の携帯代や昼食代などの必要経費を差し引くと、残るお金はわずか。
「実家暮らしだからといって、余裕があるわけではありません……。交際費や趣味のお金を切り詰めて、なんとか毎月5万円を捻出しているんです」
