◆身体の不調よりメンタルの不調が増加傾向
出版科学研究所の集計(2025年度)によると、電子コミックの売上は5273億円と電子出版の9割を占める。伸び率こそ鈍化しているが、電子コミックは2014年以来、右肩上がりの成長市場でこの6年間で売上は倍増した。「締め切りがタイトな紙の漫画雑誌と違い、Web媒体の連載漫画は掲載日を調整しやすく、いざとなれば締め切りをスキップできる。働き方はホワイト化しています」
そう語るのは、ベテラン漫画編集者の森本弘明氏(仮名・50歳)。週刊漫画誌に長年携わり、現在は総合出版社のWeb媒体でエッセイ漫画などを担当している。
「Web媒体の連載ペースは隔週や月1が主流。デジタル化で作業が効率化された上、例えば隔週連載でも平均で月30〜40万円ほどの原稿料が入ります。昼夜問わず激務をこなす人は、複数の媒体を掛け持ちする一握りだけです」
連載開始前の準備期間を長く設けて十分な話数のストックを用意し、柔軟に休載できる体制も浸透。一般常識から外れた働き方は炎上リスクもあることから、徹夜を辞さない働き方は紙媒体も含めて業界全体で減っているという。
「腰や首、腱鞘炎や痔も相変わらず職業病ですが、最近は過労による身体の不調よりも、メンタルの不調のほうが目立つ印象です。コロナ禍以降、対面の打ち合わせや会食が減り、対人関係が苦手な作家さんほど会話する機会を失い続けています」
◆連載開始後に急に太りだすケースも
孤独で不規則な生活がメンタルの悪化を招き、暴飲暴食に溺れ、体調を崩す漫画家は少なくないそうだ。「運動不足で体力・免疫力が低下しているのか、ほとんど外を出歩かないのに風邪やインフルエンザにしょっちゅう罹る作家さんも珍しくないです。糖尿病の人もまあまあいて、それまでは金欠でガリガリに痩せていたのに、連載が始まると精神的な負荷によって急に太り出すパターンも多い。デビューを目指す若手作家で、お金がなくて歯医者に行けず、歯がボロボロに抜けた人もいました」
1人で10人以上の作家を受け持ち、最低でも5〜6本の連載作品を走らせているという森本氏。担当作品やタスクが増え続ける現状に起因して、漫画編集者も健康面の課題を抱えているらしい。
「プロモーション業務まで求められるようになり、プレッシャーは常に感じています。創作に専念しづらいストレスは作家さんも敏感に感じているのかなと。出版不況で、二人三脚で頑張っても単行本が売れないケースのほうが圧倒的に多いため、お互いに虚無を感じて病みそうになる時もありますね」

