◆行きは順調だった。問題は帰り道……

最初はゆっくりと前進していたが、途中からほとんど止まったままになった。前の車との車間が詰まったまま、ブレーキとアクセルを踏み替えるだけの状態が延々と続く。気づけば、30分以上まともに進んでいなかった。
◆娘が小さな声で「トイレ行きたい」
娘は静かにしていた。だが、だんだん落ち着かなくなり、「ねえ、あとどれくらいで着くの?」と繰り返し聞いてくるようになった。坂口さんは「まだかかりそうだよ」と答えながら、内心では焦りを感じていたという。そしてしばらくして、娘が小さな声で「トイレ行きたい」と言った。
「私は『まだ大丈夫だよね?』と軽く聞き返したのですが、『うん……』と曖昧な返事でした。ここで一気に空気が変わりました」
ナビで確認した次のサービスエリアまでの距離は、なんと10キロ以上。しかも渋滞のど真ん中である。夫婦の間に、言葉にならない焦りが広がった。夫が「これ無理じゃない?」と小声で言う。坂口さんも同じことを考えていた。それでも「大丈夫だよ、もう少しで動くはずだから」と答えるしかなかった。

