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地域課題を実践で変える。不登校支援も行う、子どもたちのサードプレイス『ジブンラボ』【福島県田村市】

地域課題を実践で変える。不登校支援も行う、子どもたちのサードプレイス『ジブンラボ』【福島県田村市】

福島県田村市船引町にあるジブンラボは、小・中・高校生の子どもたちのためにひらかれた、家でも学校でもない第三の居場所です。JR船引駅から徒歩1分の場所にある元美容室だった空き店舗を活用し、子どもや若者が「これからの社会を生きる力」を育んでいます。ジブンラボを運営する、一般社団法人ネイバーフッドラボたむら代表理事の岩井秀樹さんと、スタッフで公認心理師の渡邉万里さんに、訪れる子どもたちの様子や活動内容について、お話を伺いました。

課題解決のアイデアを「絵に描いた餅」で終わらせない

岩井さん:僕は大学教員で、地域活性化を取り組みの一つにしています。東日本大震災をきっかけに勤めていた民間企業を退職し、宮城県石巻市で復興支援に携わりました。「地域課題を解こうと思ったら、その地域の住民になり、当事者として解決するしかない」と考えるようになり、縁あって移住した田村市で、この地域の課題を解決したいと活動しています。

福島大学地域未来デザインセンターの特任教授を務める岩井さん。落ち着いた柔らかなお話しぶりが印象的

ージブンラボが生まれた背景を教えてください。

岩井さん:ジブンラボは、田村市の空き店舗の課題について、従来の解決手法とはちょっと違うアイデアを考えるワークショップから生まれました。石巻市で一緒に活動していたNPO法人ハナラボ代表の角(すみ)さん、田村市の空き店舗活用を模索していた一般社団法人Switch代表の久保田さん、東京と福島から参加した9人の女子大生と一緒に、ふねひきパーク2階の空きスペースをどう活用するかを考えるワークショップです。2022年の8月頭から9月末まで実施しました。

ワークショップではデザイン思考を学び、高校生や商店街の人といった市民にインタビュー調査を実施。課題を特定して解決のアイデアをまとめ、「ふねパ未来展」と題して発表と展示を行った(写真提供:NPO法人ハナラボ)

岩井さん:高校生へのインタビュー調査で「進路や将来を気軽に相談できる相手や居場所がない」という声があり、空き店舗を活用してその場をつくろうと考えたアイデアが、ジブンラボです。地域にとって本当に大切だと思うものを実践したいと考え、未来を担う人材の育成を目指し、ジブンラボを形にすることにしました。

子どもたちが歩いて来られる場所を探し、商工会の紹介で現在の物件に決定。2023年4月に一般社団法人ネイバーフッドラボたむらを設立し、同年7月末にジブンラボ(以下、ラボ)をオープンしました。

ー「ネイバーフッドラボ」とは、どういう意味なのでしょう?

岩井さん:由来は、北欧発祥の「フューチャーセンター」です。行政や企業、住民など多様な立場の人が集まり社会課題を解決する場のことで、もとは国レベルで始まりましたが、次第に都市やご近所単位へと広がりました。僕が視察したとき、そうした小さな取り組みを「ネイバーフッドラボ」と呼んでいました。

身近な単位で、生活の困りごとや悩みを自分たちで解決していく。そうした動きを、まずはこの場所から始めたいと思い、団体名にしました。「子どもが学校に行かない」「ゴミが増え景観が悪い」といった身近な課題に向き合う活動が広がれば、田村市が少しずつ良くなっていくように思います。

田村市に住む・通学する子どもたちが思い思いに過ごす

ーラボのオープン後、子どもたちの反応はどうでしたか?

岩井さん:当初は「マッチング部」と「探求部」の2つの活動で始まりました。マッチング部は、高校生が大学生や大人にオンライン・対面で相談できる場。探求部は、アート教室などを通じて、気づきや興味・強みを見つける場です。しかし開設初年度は、子どもの利用がほとんどありませんでした。寄り道の習慣がないことや、部活の終了時間とラボの閉館時間が重なっていたことなど、子どもとタイミングが合っていなかったためです。

教育支援を行うNPO団体の助成をきっかけに不登校の勉強会を開いたことで、保護者にラボを知ってもらうことができ、不登校の子どもが来やすくなりました。また福島大学地域未来デザインセンターの取り組みで、高校生向けのアントレプレナーシップ教育(※)の場としてラボを活用し、高校生や大学生が知ってくれるようにもなりました。

(※)課題を見つけ、自ら考えて行動し、新しい価値を生み出す力を育てる学びのこと

ジブンラボのパンフレット

ー オープンして2年半、現在はどんな子どもたちが来ていますか?

渡邉さん:小・中・高校生が、1日に1〜2組ほど来館します。開館中は出入り自由で、思い思いに過ごし、好きなタイミングで帰っていきます。「何をしてもいい場所」と伝えてあり、スタッフも声はかけますが、活動の指示はしていません。高校生は、あぶくま柏鵬高校の生徒やラボ近隣に住む子たちで、友人同士やカップルで来てお茶を飲んだり、スマホを見たりしています。1人で来てずっとYouTubeを見ている子や、黙々と自習に取り組む子、団体でカードゲームをしに来る子たちもいます。

全体的には、にぎやかというより、各自が距離を保ちながら過ごしています。最初に来た子の過ごし方がその日の空気をつくり、自習している子がいれば、周囲も静かに過ごします。

コーヒーや紅茶は無料。写真左下の白い缶には自由に食べていいおやつを入れている。中学生の男子数人が帰宅前にラボに寄り、お茶を飲んでおやつを食べて帰っていくことも

渡邉さん:奥の一部屋は、不登校の子向けに開放しています。保護者は送迎のみで、子どもだけの利用です。お茶を飲んだり、おしゃべりやゲーム、アニメを楽しみながら、それぞれ自由に過ごしています。まごころ教室の後にラボへ来る子もおり、教室の先生が様子を見に来ることもあります。私がラボで見ている限り心配はなく、今はただ環境に合っていないだけなのでしょうとお伝えしています。

不登校の子向けに開放している部屋。黙々とゲーム実況を見て過ごす子や、「お菓子を作ってきたので食べませんか?」と持ってきてくれる子も。16時以降は通常登校をしている子にも開放

ーラボを利用してもらう中で、印象的なエピソードはありますか?

岩井さん:僕は、体験を通してその人の能力発見や成長を促すという活動を続けています。ラボでの高校生や先生との活動では、ものの見方や合意形成の方法を伝え、先生自身も新たな視点に気づいてくれました。先生は子どものやることに介入しがちですが、じっと我慢し、結果として作品の質が良くなかったとしても、作る過程で子どもが得る気づきには、結構大きいものがある。そのことに先生が気づく場面を見て、子どもだけでなく、大人の見方をともに考えることも重要だと実感しました。

日々のラボの運営や内装は、渡邉さんと渡邉さんの妹が担当。おしゃれな場所を必死に探す高校生たちに人気があり「高校生の活動場所を少し広げられたかな」と岩井さんは安堵する

渡邉さん:不登校の子が楽しそうに過ごす姿が見られ、よかったです。お家では家族の無意識の期待やプレッシャーを感じ取りがちですが、ラボでは「学校に行っていないのに」と言われることがなく、安心してのびのび過ごせているようです。あまり話さなかった子も、通ううちに少しずつおしゃべりをするようになり、家庭でも会話が増えたと聞きました。たとえ1人でも需要があり変化があるなら、この場の意味を感じます。またラボで出会った子同士が仲良くなり、一緒に出かけるといった関係も生まれています。学校外でも同年代とつながれる場になっていることに、ほっとしています。

「育て方が悪くて不登校になったのでは」と悩む保護者が多く、そうではないと伝えています。少し肩の力が抜ければ家庭での無意識のプレッシャーが和らぎ、子どもも過ごしやすくなります。学校に来ていない子にスクールカウンセラーが関わるのは難しいことも多く、地域の気軽に立ち寄れる場に公認心理師がいる意義は、大きいと感じています。

配信元: Nativ.media

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