ユーチューバーのヒカルの「タモリは面白くない」という発言が炎上している。彼曰く「タモリの番組を回す力は理解できる」。しかし「島田紳助や松本人志のように、タモリは人を落とさない。いじる笑いが好きだから、その面白さが理解できない」とのことだ。

しかし、タモリは島田紳助よりも松本人志よりも、さらに「毒の笑い」の日本における始祖と言っていいだろう。ビートたけしよりも毒が強いコメディアンだと思う。
◆タモリは“毒が強いコメディアン”である理由
島田紳助も松本人志もビートたけしも猛毒だ。彼らの作り出した笑いによって、大いに笑わせてもらったし、物の見方も教わった。しかし3人とも、その毒っ気の反面、ウェットな部分も多い。感動番組を作り「素敵やん」とつぶやく。芸人の生き様を哀切なメロディーで歌い上げる。著作で自らのお笑い観を語る。毒舌で世間を突き放す一方で、共感を求めずにはいられない。しかし、タモリはクールだ。共感など全く欲していないように見える。他人の理解などを求めない強さは、内なる毒の強さの表れだと、私は思う。一番悪ふざけが徹底されているのがタモリだ。
◆「イグアナ」に象徴される、タモリの異様な衝撃
タモリを世に送り出した「密室芸」といわれたパフォーマンスも、毒に満ちている。ヒカルは「イグアナのものまねを子供の頃見たけど、面白さがわからなかった」と言う。タモリがイグアナを披露していたのは、1970年代の後半で、1991年生まれのヒカルが、子供の頃にイグアナをテレビで見ることはできない。きっと「お昼の顔のタモリ」が、インプットされた後、動画か何かで、ある程度の年齢になってから見たのだろう。そんなバイアスの中で「イグアナ」を見たとしたら、理解できないのも当然だ。最初に「イグアナ」をテレビで披露した頃、タモリは、海のものとも山のものともわからない存在だった。
しかも、その風体は異様だった。ポマードでべったりとオールバックに髪を撫で付け、片目にアイパッチをしていた。これほどいかがわしいファッションをしたテレビタレントは、後にも先にもいないと思う。
そんなテレビ画面から「浮いた」存在感の男が、忌み嫌われる「爬虫類」を演じるのだ。四つ足で歩きまわり、イジリー岡田のように、舌をちろちろと出しながら。めちゃくちゃ気持ち悪くて、世間に与えたインパクトは相当なものだった。思い返せば「気持ち悪すぎて笑ってしまう」という感性の笑いは、この「イグアナ」が嚆矢だったと思う。

