花言葉「逆境に負けない強さ」を貫き、商品化が実現
湯気とともに立ち上がるリンゴのような甘い香りに、心が解(ほど)かれる。“ハーブの女王”とも呼ばれるカミツレエキスのみで作った入浴剤『華密恋』のなせるわざだ。保湿力と保温性にもすぐれるバスルームの救世主は1982年に発売された。

──なぜ、カミツレエキスだけの入浴剤を開発されたのですか?
印刷会社を経営していた父、北條晴久が咽頭癌(いんとうがん)を患ったことが、すべてのはじまりです。治療中に出会った漢方の大家が、カミツレの薬理を研究していたんですね。「健康と長寿」を会社の理念に掲げていた父は、その薬学博士に共鳴。寛解するとすぐに事務所の一角でチンキ(浸出液)作りを始めたのです。そこから、花・茎・葉の有効成分を抽出する方法を編み出しました。
──その液体には、薬草のパワーが凝縮されていそうですね。
ええ。カミツレの力で、みなさんの健康サポートをしたいと考えた父は、「入浴剤であれば生活に溶け込ませられる」という結論に至ります。すぐに当時の厚生省に「医薬部外品」の申請を行いましたが、結果は却下でした。

──どうしてでしょうか?
厚生省が医薬品の規格基準を定めた『日本薬局方』に、カミツレは1950年代まで収載されていたんです。そのためカミツレエキスだけでは医薬品になってしまいます。そこで厚生省からは、ほかの医薬部外品の成分を加えると「医薬部外品」として認可できると言われたそうです。でも、父は混ぜものにしたくなかった。カミツレエキスだけの「医薬部外品」を認めてもらうため、2年にわたって交渉を重ね、ようやく承認が下りたのです。
──先代がそこまで無添加を貫いたのは、会社の理念である「健康と長寿」を、本気でかたちにしようとしたからなのでしょうか。
父は長野県の出身で、新鮮な野菜が身近にある環境で育っています。私が子どもの頃の食卓には玄米がよそられ、祖母が育てた土付きの野菜をお世話になった方々に配っていました。植物が持つ力を、暮らしの中で知っていたのだと思います。余計なものを足さなくても、自然はちゃんと働くという感覚が根っこにあったのではないでしょうか。
減反の打開策として、カミツレ栽培を提案
──創業時から、カミツレを育てていらっしゃるのですね。
はい。長野県にある「カミツレの里」がそれです。さらに1983年には、岐阜県大垣市の農家さんとも手を組みました。
──40年以上前から、カミツレ生産日本一の地域との関係を築かれていたんですか?
実は、父が大垣市役所に栽培を提案したんですよ。
──なんと。立ち上げと同時に、地場産業の発展にも尽力されていたのですね。
近隣に住む親戚から、「減反する代わりにカミツレを育ててみようと掛け合ってみては」と助言を受けたそうです。それが受け入れられたかたちですね。同時に「大垣市薬草組合」も発足し、組合長はいま5代目になります。

──そうして、有機栽培の輪は18県・31か所まで広がっています。
共感してくださる生産者のみなさんのおかげです。2021年に栽培を始めた島根県大田市では、5月に「カモミール祭り」も開催されます。イベントではウェディングフォトの撮影も行われていて、幸せのお裾分けまでしてくださっているんですよ。
