
近年では様々な事情を背景に、あえて法律婚を選ばないカップルも増えています。しかし、相続においては注意が必要です。事実婚(内縁関係)では相続権がないためです。本記事では『50代から始める終活 「争族・不動産」対策』から一部を抜粋し、事実婚関係にあるカップルの相続対策について解説します。
自分亡きあと、“内縁の妻”に自宅を遺したい
――入籍を望まない事実婚夫婦のケース
内縁の妻に自宅を遺したい
電子部品メーカーの経理部に勤める賢一さん(58歳・仮名)は、休日は大型バイクに跨がり全国各地を旅行したり、美味しいと評判の飲食店を巡ったりと、若い頃から趣味に没頭する時間を楽しんできました。
賢一さんには5歳離れた弟・靖彦さん(仮名)がいます。靖彦さんは、30歳で結婚して妻と子どもが1人いますが、賢一さんは法律上ずっと独身で、子どももいません。兄弟ながら生き方も性格も正反対で、子どもの頃はよく喧嘩をしていたといいます。
しかし成人してからは一転し、いまや互いの生き方を理解しあい、双方の自宅を行き来するほど仲良しに。早くに両親を亡くした際も、相続で揉めることはありませんでした。賢一さんは両親が住んでいた分譲マンションを、靖彦さんは預貯金を中心に受け継ぐ形で円満に済ませ、現在に至っています。
また賢一さんには、婚姻届は出していないものの夫婦同然の生活をしている女性、いわゆる内縁の妻がいます。8年前に共通の趣味を通じて知り合った明美さん(54歳・仮名)です。
ずっと独身を通してきた賢一さんと、一度離婚歴があるものの子どもはおらず、仕事と趣味を楽しむ明美さん。2人はどことなく似ていて、靖彦さんも賢一さん宅を訪れるうちにすっかり打ち解けました。
過去に、賢一さんと明美さんは正式な婚姻について話し合ったこともありましたが、互いに仕事を持つ2人は、「お互いに対等な立場で生活しやすい」「改姓の必要がない」「もし内縁関係を解消しても、戸籍に履歴が残らない」等の理由から結局、法律婚を選択しませんでした。
そんな賢一さんも、両親の法要の際、父親が亡くなった年齢(61歳)に自分の年齢が近づいていることを改めて実感したとき、将来自分が亡くなったあとのことを考えるようになりました。
内縁関係(事実婚)は、「婚姻に準ずる関係」とされているが…
内縁関係とは、法律上の婚姻手続きはしていないものの、実態的には法律上の夫婦と変わらない結婚生活を送っている関係のことで、「事実婚」ともほぼ同じ意味で用いられます。
事実婚のデータはそもそも少なく、その実態は見えにくいものの、令和3年度に内閣府が実施した「各種意識調査」によると、事実婚を選択している人は、成年人口の2~3%を占めていると推察されています(内閣府男女共同参画局『男女共同参画白書令和4年版』-コラム3事実婚の実態について)。
いわゆる「内縁の妻」は、婚姻届の提出・受理がされていないため、一般的には「法律婚の妻」とは認められません。しかし、お互いに婚姻の意思があったり、夫婦同然の共同生活があったりなどで法的に内縁関係が認められる場合には、「婚姻に準ずる関係」として判例(最高裁昭和33年4月11日判決)でも認められています。
例えば、内縁関係にある夫婦にも、次のような請求権が認められます。
・内縁関係にある相手方が不貞行為をした場合の慰謝料請求
・正当な理由がない一方的な内縁関係の解消があった場合の慰謝料請求
・内縁関係を解消する場合の財産分与請求
