
◆世界的なビール離れが進む
ビールの市場は停滞しています。キリンホールディングスの調査によると、2024年の世界のビール消費量は1億9412万キロリットルで前年比0.5%の増加に留まりました。消費量ランキング1位で年間4053万キロリットルという巨大な中国市場は前年比で3.7%も減少、2位のアメリカも0.5%減少しています。ビールで有名なドイツは2.2%、日本も2.7%それぞれ減少しました。ロシアやインド、タイなどで消費量は伸びていますが、世界的に見ると市場の伸長ペースは限定的であり、高い伸びしろは失われています。サントリーは2014年にジムビームを1兆6500億円で買収し、大成功を収めています。国内のビール市場の先細りが見え始めた中で、海外の市場開拓に力を入れていました。ウォール・ストリート・ジャーナルは、2024年にサントリーがアメリカのクラフトビール会社ボストン・ビールと買収交渉に入ったと報じています。しかし、成立の話は聞こえてきません。そうした中で、第一三共ヘルスケアを買収するというニュースが飛び込んできたのです。
サントリーがヘルスケア事業の強化を印象づけた瞬間でした。「ロコモア」などを扱うサントリーウエルネスの2025年12月期の売上高は1102億円。第一三共ヘルスケアの2025年3月期の売上高が867億円で、2社合計で2000億円近い売上規模になります。なぜ、ビール会社は健康食品や医薬品事業を強化するのでしょうか。
◆健康食品にシフトする背景には「発酵技術」が
ビール会社は高い発酵技術を持っています。ビールの栄養価は高く、健康食品と本業の方向性が似ていたことが背景にあります。国民の健康志向の高まりと、健康や福祉を重視するSDGsとの方向性とも合致しており、企業イメージを高めやすいというメリットもありました。しかし、健康食品の市場も停滞が鮮明になってきました。矢野経済研究所によると、2025年度の健康食品の市場規模は前年度比0.8%減の9147億円。サプリは微増を続けているものの、その他の健康食品は市場の縮小が顕著なのです。一方、医薬品の開発支援などを行うIQVIAによると、2025年度の医薬品の市場規模は前年度比1.7%増の11兆7039億円。高齢化に伴って国内の医薬品市場は旺盛に伸びています。健康へと目を向けたビール会社が、医薬品へと行きつくのは当然のことでした。

