◆高効率な収益モデルを追求するキリン
キリンホールディングスは、2025年12月期の酒類全体の事業利益が前期比9.1%増の1354億円でしたが、医薬品を扱う協和キリンの事業利益は同11.4%増の1023億円でした。売上収益は酒類が1兆753億円で、協和キリンが4968億円。協和キリンは、酒類の販売よりも遥かに効率よく稼いでいるのです。ただし、医薬品のビジネスは経営の舵取りが極めて難しいことも確か。2026年3月、協和キリンはアトピー性皮膚炎の治療薬候補だった「ロカチンリマブ」のすべての治験を中止すると発表しました。売上2000億円を生み出す潜在性を持っていたプロジェクトから撤退したのです。悪性腫瘍に関する新たな懸念が確認されたことがその理由。医薬品の開発は投資額が大きく開発期間が長期に渡るため、リスクが大きいビジネスであることは間違いありません。
◆アサヒとサッポロの動きは?
そうした中で、ビールや酒類への経営資源の集中を進めようとしているのがアサヒとサッポロ。アサヒは2025年12月に英蒸留酒大手ディアジオから東アフリカ事業を4600億円で買収すると発表しました。ケニア、ウガンダ、タンザニアにおけるビールと蒸留酒事業を取得することになります。アフリカは世界のビール消費割合の8.3%ほどで、市場としては大きくありません。しかし、2024年の消費量は3.7%増加しています。成長性そのものは高いのです。サッポロは2026年4月にアメリカのクラフトビール「ストーン・ブリューイング」事業を売却すると発表しました。2022年に200億円で買収しましたが、早くも売却。126億円の減損損失を計上しています。アメリカは急速なインフレでビールの市場が低迷し、十分な収益性が得られませんでした。
しかし、ビールと酒類の強化には意欲的。複合商業施設「恵比寿ガーデンプレイス」などを展開するサッポロ不動産を4770億円で売却し、3000億円から4000億円程度の資金を成長投資に回す計画。主に酒類事業への投資に充当する予定です。成長性のある海外事業を強化するのではないでしょうか。ビール会社の新たな生き残り策が始まりました。
<TEXT/不破聡>
【不破聡】
フリーライター。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。得意領域は外食、ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界

