◆【エピソード2】「荷物邪魔ですよ」の注意で変わるかと思いきや…

そんななか、ふと目に入ったのは、座席にゆったりと座る女性だった。その隣の席には、大きく膨らんだエコバッグが置かれていたという。
「はじめは誰かが座ってくるのかと思ったんですけど、明らかに“誰も座らないで”という雰囲気で、荷物が置いてありました」
さらに驚いたのは、その女性が手鏡を取り出し、堂々とメイクを始めたことだった。
「マスカラ塗って、アイシャドウ塗って、パウダーもはたいて……。もう完全に“自分の部屋”って感じでしたね」
周囲の乗客は窮屈そうに立っていたが、ついに我慢できなくなった岡本さんは、声をかけることにした。
「すみません、荷物が邪魔ですよ」
女性は一瞬ギョッとした表情を見せたものの、すぐにバッグを膝の上に抱え直した。
「そのときは、“やっと少し空間ができた”って、正直ホッとしました」
◆再び広げられた“私物エリア”
しかし、次の駅に到着すると、女性は何事もなかったようにバッグを座席に置き、メイクを再開したのだ。
「もう呆れて、なにも言えませんでした。“注意しても無意味”なので、諦めました」
周囲の人々も同じように、女性を避けるように立っていたという。
「たった数分のことなんですけど、本当にストレスでした。公共の場で自分だけが快適に過ごせればいいっていう態度、信じられません」
電車を降りた岡本さんは、思わず深いため息をついた。
「電車内で “自分の部屋”みたいに振る舞う人が、最近増えた気がします。これが日常にならないでほしいですよね」
電車では個人のマナーが大いに問われる。だが、不快に感じても声をあげにくい空気があるのは事実だ。自分の何気ない行動が周囲の迷惑になっていないか、あらためて意識する必要があるだろう。

