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親が富裕層でも子どもは「体験貧困者」になってしまう。「わが子の感性を殺しかねない」大人の思考停止とは

親が富裕層でも子どもは「体験貧困者」になってしまう。「わが子の感性を殺しかねない」大人の思考停止とは

◆「勉強だけ」「運動だけ」がダメな理由

では、そもそもなぜ、体験を積み上げるべきなのか?

それは、「人間の幅」に関わると考えられるため。

いわゆる人間の「経験値」とは、実際の体験(経験)で得られた情報を処理する中で蓄積される、様々な経験則的知識のことを指します。

「どのような情報をフィードバックしてきたか」で、ある程度の人間的な幅や深みが決まってしまう。

「亀の甲より年の劫」とはいいますが、年長者のほうが基本的に落ち着いて事に臨める傾向が強いのは、知覚吸収してきたイベントの量が多いから。

ただ、同じ年長者でも深みには人によって差があります。人により、経験してきたイベントが異なるからです。

となれば、経験の「数」に加えて、経験の「種類」も関係があると踏むべき。

「なかなか普通はできない経験」をたくさん吸収すれば、普通は形成されない経験知識が得られるかもしれません。そしてそれらは、普通は答えられない(知識が足りない)問題に挑むうえで、有効な対抗策となり得る。

つまり、できる限り広く物事を経験したほうが、未知の事態に直面した際にも、より幅広い対応力を持つ人間になれると考えられないでしょうか。

「勉強だけではダメ」「運動だけではダメ」なんてよく言われますが、これは「勉強/運動だけでは、特定の角度以外から投じられた質問に対応不可能になってしまうため」だと考えられます。

◆子どもの経験値は親の見識次第

だからこそ、私はひとりぼっちでドリルを解き続けていた子どもに対して、複雑な感情を抱いたのです。

休日の行楽地で、きっと遊びたい気持ちをこらえつつ勉強に向かうその健気さには、純粋に感服します。

私自身、学生時代は家計が苦しく、勉強に打ち込んでいた身ですから、努力の尊さは痛いほどわかるつもりです。

しかし、せっかく家族で特別な場所に来ているのです。家族旅行中でなければできない「限定的な体験」はいくらでもあったはず。

それにもかかわらず、「いつでもできる」ような勉強を優先するのは、あまりにも体験として寂しいと言わざるを得ません。

現代では、実家が裕福な子どもを見て「親ガチャ当たりだ」と揶揄する流れが定着しつつあります。

しかし、ここまで見てきたように、お金があることはあくまで前提であって、体験を積めるかどうかは、「親がどれほど広い視野をもっているか」に依存してしまうのです。

逆を言えば、貧乏は明らかに不利ではあるものの「貧乏だからこそできた経験」は、時により強烈な武器にもなりうる。

知恵と工夫で、ある程度戦える余地はあります。

これからの時代は単なる経済力ではなく、「親の見識が広いか否か」が、子どもの経験を決定づける時代に入ったのかもしれません。

<文/布施川天馬>

―[貧困東大生・布施川天馬]―

【布施川天馬】
著述家、教育ライター。 一般財団法人「ドラゴン桜財団」評議員。 1997年生まれ。世帯年収300万円台の家庭に生まれながらも、効率的な勉強法を編み出し、一浪の末東大合格を果たす。著書に最小コストで結果を出すノウハウを体系化した『東大式節約勉強法』、膨大な範囲と量の受験勉強をする中で気がついた「コスパを極限まで高める時間の使い方」を解説した『東大式時間術』など。株式会社カルペ・ディエムにて、お金と時間をかけない「省エネスタイルの勉強法」などを伝える。MENSA会員。(Xアカウント:@Temma_Fusegawa)
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