◆わずか1週間で退職希望を告げられ…
「完全にヒヨってしまったんだと思いますよ……で、それから1週間後には来なくなりました。その後、電話があって『辞めたい』と言われました。電話口では『自分には責任が重すぎる』『思っていた仕事と違いました』なんてことを話していました。まだ何も教えてないのに、仕事の一番しんどいところに入る前に辞めちゃった……という感じです」まさかの新入社員の退職理由に、現場は拍子抜け。肩透かしを喰らった状態になったという。
「正直、“これから教えるのに”ってタイミングでしたからね。最初は誰でも分からないことはあるけど、慣れれば普通にできるようになる仕事です。現場としても時間をかけて育てるつもりでした。なのにAは、仕事を少し見ただけで責任が重いとか、ミスしたらどうしようとか。いきなり完璧にやらなきゃいけないと考えちゃったのかもしれませんね」
本来であれば、簡単な作業から始めて、少しずつできることを増やしていく。そうやって慣れていく中で、「意外とできるかも」と感じるようになるものだ。だがAは、その最初の一歩を踏み出す前に立ち止まってしまった。結果として、「思っていた仕事と違う」という感覚だけを残して、職場を去ることになったのだ。
◆プレッシャーを感じすぎてしまったのが原因か?
「あと、うちは保守なので、プログラミングをするわけじゃないんですよ。問題が起きたら状況やログを見て、原因を切り分ける仕事です。設備側なのか、システムなのかを判断して、もしバグならメーカーに修正を依頼する、そういう役割なんです。もしかすると、そのあたりもAは勘違いして勝手にプレッシャーを感じたのかもしれないですね。今となっては分かりませんが……。でも、正社員なのにもったいないですよね。一応、大手ですからね……」本間さんは最後にそう語った。新入社員にとって、“社会で仕事をすること”は想像以上に重いものだったのかもしれない。だが、彼の場合はその重さを知る前に社会から離れてしまったとも言えるだろう。
<取材・文/結城>

