◆パチンコ業界が狙う新市場

業界大手のマルハン東日本カンパニーが都内で運営する、アミューズメントブランド「ME TOKYO」もその先行事例だ。マルハン東日本カンパニー営業部部長の高原安未氏は、「クレーンゲーム事業はもともとゲームセンター部門の延長にありましたが、近年は明確な経営戦略のもとで拡張が加速しています」と話す。
遊技市場は過去10年で1.5倍に拡大し、インバウンド需要も追い風となった。その成果は数字に如実に表れており、マルハン東日本では既存のパチンコ事業も堅調に推移しているなか、現在7店舗あるクレーンゲーム事業もまた、同社の店舗運営力や集客ノウハウを生かした新たな収益領域として着実に存在感を増している。
景品を獲得して持ち帰るというわかりやすい顧客体験が、若年層や女性客にも広がる理由のひとつになっており、なかでも「ME TOKYO」は、ターゲットを18〜24歳のZ世代女性に絞り込み、来店客の8割以上を占める。「来ること自体がイベントになる空間」を目指し、若いスタッフの感性を活かした内装設計、非常階段を鏡で加工したフォトスポットなど、SNSでの自然な拡散を誘発する仕掛けが随所に施されており、ハロウィンには開店前に200人が列をなした。
地方でも、こうした事例に触発されるように、パチンコ業界の各社もクレーンゲームへの参入を加速させている。その一つが宮城県を拠点に宿泊・飲食・不動産など多角的な事業展開を進めるアムズグループだ。2026年5月、台湾最大手クレーンゲームブランド「熊嗨星樂園(スターベアリー)」と合同で株式会社べライズを設立し、宮城県富谷市にクレーンゲーム専門店「スターベアリー富谷」を開業した。
◆台湾発ブランドが宮城に上陸


参入を後押しした最大の根拠は、家族向けであることと投資効率の高さだ。初期投資はパチンコ店と比べて抑えやすく、郊外型店舗としての収益性にも期待できるという。
同社のマーケティング担当の分析によれば、一般的な大手クレーンゲームチェーンの原価率は売上の35%前後、獲得率は約5%(20回に1個)程度とされる。一方、近年台頭している最新の専門店では、原価率55%、獲得率9%(11回に1個)まで引き上げることで集客を強めるモデルが主流だ。
しかし、スターベアリーは最新専門店の水準をさらに上回る、極めて高い還元率を想定しているのだという。
1店舗目の成功でビジネスモデルの検証が終われば、その後の展開は「かなりスピード感を持っていける」と見立てている。実際、プレオープン期間(5/1〜5/10)の来客数は、なんと累計約22万人に上った。その盛況ぶりは「景品の補充が追いつかないほどだった」(担当者)といい、すでに2店舗目・3店舗目の物件探しも始まっているとか。

