◆■「息を吹きかける」のも完全にNG。データが示す車内のリアル
今回のエピソードで羽多野さんが受けた「至近距離での鼻息」という被害。これを単なる迷惑行為で済ませてはいけません。最新のデータと法律を紐解くと、加害者が言い逃れできない「厳しい現実」が浮かび上がります。【事実1:最新調査で判明した「現代型痴漢」の正体】
東京都の『令和6年度 痴漢被害実態把握調査 報告書』では、女性が体験した「卑わいな言動」の具体例を詳しく挙げています。驚くべきは、その範囲の広さです。
・今回のケースに類似:匂いをかぐ、息を吹きかける
・スマホ悪用:AirDrop等で卑わいな画像を送りつける、画面を見せつける
・巧妙な接触:カバンやスマホをわざと身体に押し付ける
これらは、東京都迷惑防止条例(第5条第1項第3号)が禁じる「卑わいな言動」に該当する可能性が高い行為です。条例では、直接身体に触れていなくても、相手に性的羞恥心を与え、嫌悪感を抱かせる「下品でみだらな言動」を厳しく制限しています。この規定に違反した場合、「6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金」、常習犯であればさらに重い罰則が科される可能性もあります。
つまり、「触っていないからセーフ」という理屈は、行政の調査現場でも、実際の法解釈においても、もはや通用しないのです。結論。相手が嫌がることを強いるような卑劣な行為は、いかなる形でも「アウト」なのです。

さらに、こうしたトラブルを防ぐため、公共交通の現場には明確なルールが存在します。法律(旅客自動車運送事業運輸規則 第13条)では、バス事業者は「他の旅客の迷惑となるおそれのある者」などに対し、運送の引受けや継続を拒絶(乗車や乗り続けを断ること)ができると定めています。
今回の運転手さんのアナウンスは、まさにこの法律に基づいた正当な「排除」への第一歩。今の高速バスは防犯カメラの導入も進んでおり、こうした「証拠」は逃さず記録されています。
「バスの中ならバレない」という幻想は、最新のデータと法律によって完全に打ち砕かれています。違和感を覚えたら、迷わず周囲や運転手さんに助けを求めてください。その一歩が、卑劣な加害者に正当な「社会的制裁」を下すための、最強の武器になるのです。
<取材・文/和泉太郎 再構成/日刊SPA!編集部>
【和泉太郎】
込み入った話や怖い体験談を収集しているサラリーマンライター。趣味はドキュメンタリー番組を観ることと仏像フィギュア集め

