◆7年で約20人を出禁に 「暴言を我慢して心を病むのなら、はっきり伝えたい」

東京都目黒区内でバー「CASUAL BAR Don’tCry」を経営する神田芳朗さんは’23年2月、店舗のGoogleレビューに書き込まれた口コミに対してこう書き込んだうえで、客側への「出禁」を通告した。
元のレビューは「帰り際にグラスを割ってしまったら、客の心配よりまず第一声に、あ、弁償になるんで、と言われました」と来店時に起こったトラブルを暴露、店側の対応を非難する内容だ。
それに対し、神田さんは「そのまま帰る可能性が高いので(そう伝えた)」「まずは『割ってしまってすみません』じゃないんですか?」と、事細かに反論。店側がここまで「本気の返信」をすることは珍しいが、なぜこうした対応を取ったのだろうか。
「元のレビュー内容を他の客に鵜呑みにされると、店にとってマイナスでしかなかったからです。とくに個人経営の飲食店は、客の暴言を我慢しすぎて体を壊したり、メンタルを病んで死に追い込まれることも多いと聞きます。それもあって、自分の精神を守るためにも日頃からはっきりとした伝え方をしています」

直近で出禁にしたなかで、最もひどかったケースを聞いた。
「男性3人客のうち1人がトイレで嘔吐して吐瀉物まみれにしていました。清掃後、それを伝えたところ、『俺たちはやってない』としらばっくれる始末。次に同じことをやったら清掃料を支払うように伝えると、うち1人が僕の顔面を殴ってきたので警察に通報。警察官立会いのもと、迷惑料を支払わせたうえで出禁にしました」
◆HPに出禁の条件を告知する店も 「敬遠していた客が戻ってきてくれた」

来店経験のない客にとっては緊張感が走る内容だが、店主の松宮剛さんは「ホームページに書いているのは全部実際に被害があり、出禁にしたケースです。『この店面倒くさそうだな』と、来店を控える方がいても気にしません」と話す。


「出禁の理由は勝手に持ち込んで食べたお菓子の残骸を放置したり、店の備品や装飾を故意に破損したり、お食事の提供タイミングを合わせたいのに長時間タバコで離席したりとさまざま。再三の注意に応じていただけない場合、『次回のご来店はお断り』とお伝えしています」
個人経営の飲食店で出禁を通達するのは、なかなかの勇気が必要に思える。
「たしかに店をコロナ禍に開いたこともあり、一人でも多くの来客が欲しかったので当初は多少の迷惑行為は見逃していました。それでも、このまま迷惑行為を見逃していると店がめちゃくちゃになり、経営が成り立たなくなってしまう。そう思い、覚悟を決めて(出禁を)伝えるようになりました」
ホームページに記載していない内容であっても、行為次第では「出禁」と判断するケースもある。
「当店ではペアリングコースとして、お食事に合うお酒をその場で提案してご提供することもあります。ただ、会計後に追加でお酒を注文してその分の代金を支払わない方がいました。店としては『無銭飲食』ととらえ説明したのですが、納得されずそのまま退店されましたので出禁としました」
店として「迷惑客はお断り」という意思をはっきり示したことで、思わぬ副次的な効果があったとも、松宮さんは続ける。
「1万円程度だった客単価が1万5000円から2万円程度に、そして年商もおよそ2倍にアップしました。嫌な思いをしたけど何も言えず、店を敬遠されていたお客様が戻ってきてくださったことが、売り上げアップに繋がったと考えています。新規の良いお客様も増えましたし、出禁を宣言して本当に良かったですよ」

