利益が出ても、急落しても「市場に居続ける」
ここで注意したいことは20年の“長期投資”の意味です。20年間の長期投資というのは、オルカンやS&P500といった市場と連動する分散された株式ファンドを一度買ったら、20年間持ち続けるということです。つまり、利益が出たから売却するとか、急落したから売却するとか、途中でそういうことをしてはいけません。売却するということは、一時的に市場を離れてしまうことになります。
市場を離れたときに、大きな値上がりをすることもあるかもしれません。そして、その大きな値上がりがいつあるのかは、誰も予測できないのです。「過去30年間(1995〜2024)でS&P500に全期間投資していた場合、最も上昇した10日を逃したらリターンがほぼ半分になった」というレポートがあります。このように、“ほんの数日”を逃すだけで、長期投資の成果が大きく変わる可能性が高いのが株式投資です。
「市場が好調のときだけ市場に入ればいい」「暴落時に逃げて、回復を待てばいい」といった“タイミング重視”の戦略は、実際には成果を出すことが難しい投資手法であるといわざるを得ません。
したがって、私たちは短期的な値動きを予測しようとするより「市場に居続ける(Time in the Market)」ことを重視すべきです。市場に出たり入ったりを繰り返す行為は、一見するとリスクを避けているようですが、実際には、相場が大きく回復する局面や、リターンの大部分を生み出す限られた「上昇日」を逃してしまうリスクを高めます。
株式市場の長期リターンは、毎日の平均的な上昇の積み重ねで生まれているわけではありません。ごく一部の大きな上昇局面が、全体の成果を左右しています。感情に流されて市場から離れてしまうことは、その最も重要な瞬間に立ち会えない可能性を高めてしまうのです。
だからこそ、投資において本当に重要なのは、「当てること」ではなく、「続けること」です。“Time in the market beats timing the market.”(市場のタイミングを計ろうとするよりも、市場に居続ける時間のほうが、はるかに大きな成果をもたらす)という投資の格言があることも、それを証明しているといえるでしょう。
長期投資とは、相場を完璧に予測する技術ではありません。変動を受け入れながらも、市場との関係を断たずに持ち続ける姿勢そのものが、最終的なリターンを決定づけるのです。
長期投資では、逆境の時ほど後の成果が大きくなる
また、長期投資で大切なのは、途中でやめずに積み立てを続けることです。これは、相場が下がったときに積み立てをやめてしまうと、せっかくの“安く買える時期”を逃してしまうためです。毎月一定額を投資する定額積み立てであれば、相場の上下にかかわらず着実に投資を続けられ、長期的な成果につながります。
もちろん、相場が急落すると不安になるのは自然なことです。「このまま積み立てていて本当に大丈夫だろうか」と感じたことのある人も多いでしょう。しかし、長期投資では、逆境の時ほど後の成果が大きくなるという逆説的な仕組みがあります。だからこそ、定額積み立てを継続することが重要なのです。
ここで、2つのシナリオを比較してみましょう(図表3・図表4参照)。
シナリオA:10年間、相場が一直線に上昇して価格が1.5倍になった場合。
シナリオB:最初の5年間で価格が半分になり、その後5年間かけて元の水準に戻った場合。
[図表3]株価シナリオ(シナリオA、シナリオB) 出所:著者作成
[図表4]積立投資をした場合の投資元本と資産評価額の推移(シナリオA、シナリオB) 出所:著者作成
この2つのシナリオのもとで、毎月1万円を10年間積み立てることにします。多くの投資家はシナリオAのように、ストレスなく上昇してほしいと考えるでしょう。しかし、実際にはシナリオBのように大きな下落が起こることもあります。興味深いのは、シナリオBでも毎月定額で積み立てていた場合、価格が安いあいだに多くの口数を手に入れられるため、最終的なリターンはシナリオAを上回るという点です。
つまり、下落局面でも慌てず、定額で積み立てを続ける――その地味な行動が、知らず知らずのうちに未来の大きな成果につながるのです。そして、相場が下落したときにどのように行動するか、そのことが将来の運用の成果を大きく左右します。
オルカンを通じて世界中の企業の成長に参加するということは、いい換えれば、世界経済と一緒に自分の人生を歩むことです。毎月の積み立てという小さな一歩を重ねるだけで、未来の大きな成果につながります。
世界経済は長期的に成長を続け、その果実は確実に私たちの資産として実を結びます。地味な行動に思える積み立ても、人生の自由やワクワクに直結する――それが、長期投資の最大の魅力です。
代田 秀雄
三菱UFJアセットマネジメント 前常務
シロタ・ウェルス・アンド・ウェルビーイング・アドバイザーズ 代表
