実はわたし自身も、かつてスカウトされた側だった。前職での営業活動に疲れ切っていた時期、都内の駅前で声をかけられ、深く考えずに入社を決めた。入社後しばらく経つと、今度は自分がスカウトする側に立つようになった。された側とする側、両方を経験したからこそ見えてきた舞台裏をお伝えしたい。

◆「楽しそうなイベント」で集客することも
街頭スカウトをしていると、立ち止まって話を聞いてくれるのはパートで働く主婦層が多かった。生保業界の働き方は主婦にウケがいい。「時間の融通が利くから子育てと両立できます」「旦那さんより稼いでいる方もいますよ」といった言葉が響くのだ。スカウト後の流れも決まっている。キャリア診断テストを案内して来社の約束を取り付ける。支社では診断結果をもとに不安や悩みを引き出しながら「保険業界なら解消できる」と未来像を描いてみせる。
街頭スカウト以外にも採用ルートはある。既存の契約者や知人に対しては、占い師を招いたり、ケーキが振る舞われる女子会風のイベントに誘うこともあった。保険の話ではなく「楽しそうなイベント」として案内するので、参加者の多くは採用目的だと知らないままやってくる。
◆採用活動にも「ノルマ」が
平日の日中に来る人の多くは、主婦かシフト制で働いている。こういう人たちにとって、支社のオフィスも採用に一役買っていた。広々とした綺麗なフロアに女性たちが思い思いのデスクグッズを並べ、あちこちでキャッキャと談笑している。活気ある職場の光景が、オフィス勤めでない人には輝いて見えるようだった。ちなみにわたしの中途入社の同期は20人。わたし以外は営業未経験で、元々の仕事は飲食店スタッフ、エステティシャン、美容師、アパレル販売員、主婦。初めての正社員雇用という人や、「普通の会社なら採用されないだろうな」と感じる人さえいた。幅広い層が集まってくる背景には、生保業界特有の採用活動の仕方にある。
会社が求人サイトで募集するわけではなく、採用活動そのものを生保レディたち自身がおこなう仕組みになっている。一般企業のリファラル採用とは違い、生保業界の採用活動は半ばノルマのような義務として組み込まれている。業界の外にいる人からすると、なかなか驚きの構造ではないだろうか。

