将来の生活や老後資金に対する不安から、多くの方は「少しでもお金を増やしたい」と考えるのではないでしょうか。こうした背景もあり、高齢の親が金融機関等から資産運用の提案を受ける場面も増えています。
なかでも「外貨預金」や「外貨建て保険」は心理的なハードルが低く、提案を受けるがまま契約に進むケースも見られます。しかし、これらは円建ての商品とは仕組みが異なり、為替の影響を受ける金融商品です。十分に理解せず契約すると、思わぬ損失やトラブルに繋がる可能性があります。
本記事では、外貨商品のリスクを整理しながら、親を守るために子どもができる対策と、金融機関に確認すべきポイントを解説します。
「預金だから安心」と思い込んでしまう親世代の“落とし穴”
【画像出典元】「stock.adobe.com/takasu」
外貨預金は「預金」という言葉から、元本が守られると思っている方もいますが、それは誤解です。為替レートの変動により円での受取額が増減し、元本割れが生じることもあります。
例えば、1ドル=100円で1000万円を10万ドルに換え、年3%の利子がついた場合、1年後は10万3000ドルになります。しかし、解約時に1ドル=95円の円高であれば、受取額は978万5000円となり元本を下回ることになります。さらに利子には20.315%の税金が課されます。
また、為替手数料も見落とせません。外貨に交換する時の為替レートは為替手数料が加味されるため、買う時は手数料が上乗せされて支払額が多くなり、売る時は手数料が差し引かれて受取額が少なくなります。例えば、基準となる為替レートが100円でも、買う時は101円、売る時は99円という具合です。つまり、購入時と売却時に為替が変わらなくても手数料分が受取額の足を引っ張ることに繋がります。
加えて、外貨預金は預金保険制度の対象外であり、金融機関が破綻しても元本は保護されません。外貨預金は円預金よりも金利が高いのが魅力ですが、それだけで判断せず、これらを理解した上で利用することが重要です。
公的機関が指摘する“外貨商品トラブルの構造”
外貨建ての商品は、預金だけでなく終身保険や個人年金保険などでも提案されることがあります。こうした商品には為替リスクに加え、契約の締結・維持・死亡保障などの保険関係費用や中途解約の制約があり、構造が複雑でコストが見えにくい点が特徴です。
独立行政法人国民生活センター(2020年2月公表)によると、外貨建て保険に関する相談は増加しており、典型的な事例として次のようなものが報告されています。
・定期預金をしたつもりが、外貨建て変額個人年金保険に加入していた
・将来必要な施設入居資金と伝えていたのに、外貨建て生命保険の契約だった
・高齢の父宛てに外貨建て生命保険証券が届いたが、父は加入した覚えがないと言う
・高齢独居の叔母が約20件の外貨建て個人年金保険などを次々に契約していた
・両親が外貨建て生命保険を勧誘されクーリング・オフしたが円高で損が出た
近年は円安の影響で損失が表面化しにくい状況にありますが、商品のリスク構造が変わったわけではありません。理解不足によるミスマッチは引き続き起こり得ます。
販売側には当然、説明義務がありますが、実際には顧客の理解度を配慮せずに販売されるケースも見られます。特に高齢者は、断りづらい、判断を急かされるといった状況からトラブルに繋がりやすい傾向があるようです。理解できない場合は無理に契約せず、見送ることも必要な判断となります。