◆木刀でも止まらない騒音、そして110番へ
細川さんは護身用に木刀を所持していたので、半ば衝動的にそれを天井に向けて突き上げたといいます。
音は一瞬弱まることはあっても、すぐに再開。まるで波のように、静寂と爆音を繰り返します。
「正直、気味が悪かったです。どういう人が住んでるのか分からないですし」
直接訪ねるのはリスクが高いと判断した細川さんは、近くの交番へ向かいます。深夜にもかかわらず、足を運んで事情を説明したそうです。
対応した警察官が上階の部屋を訪ね、インターホンを押したものの反応はなし。しかし、それ以降、騒音はぴたりと止まりました。
「とりあえずは助かりました。でも、正直また来るんじゃないかって不安でしたね」
その予感は的中します。深夜の爆音はなくなったものの、今度は日中に同じような重低音が響くようになったのです。
◆実は有名人だった“騒音”の主
そんな状況が続いたある日、上階の住人が菓子折りを持って謝罪に訪れました。現れたのは、若い男女の二人組。どこか“普通ではない”雰囲気をまとっていたといいます。「いわゆるアーティストっぽい感じでしたね。服装とかも個性的で」

「ある夜、テレビを見てたんですよ。そしたら、あれ?ってなって」
画面に映っていたのは、なんと上階に住む男性だったそうです。
「思わず『えー!』って声を上げました。しかも、結構敷居の高い某番組だったんです。そこで演奏していたんですよ!」
それ以来、多少の音漏れは全く気にならなくなったという細川さん。むしろ、ビートが心地よいBGMになったそうです。
「今回の騒動以降、なんか一気に距離が縮まって、先日なんかはエントランスで偶然に出くわしても気さくに会話してくれて、なんだか一気に良好なご近所付き合いができるようになりました!」
そんな意外な展開を経験した細川さん。今では“騒音主”のライブに行き、ファンクラブにも入ったとのことです。
<TEXT/八木正規>
【八木正規】
愛犬と暮らすアラサー派遣社員兼業ライターです。趣味は絵を描くことと、愛犬と行く温泉旅行。将来の夢はペットホテル経営

