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会社が手を焼く問題従業員…前職への問い合わせで発覚した〈解雇歴〉〈残業代請求訴訟〉を理由に「経歴詐称」で解雇できるか?【弁護士が解説】

会社が手を焼く問題従業員…前職への問い合わせで発覚した〈解雇歴〉〈残業代請求訴訟〉を理由に「経歴詐称」で解雇できるか?【弁護士が解説】

不当解雇と判断された場合の「未払賃金」への懸念

ここで重要となるのが「バックペイ(未払賃金)」です。通常、労働者は働いて初めて賃金請求権を得る(いわゆるノーワーク・ノーペイの原則)のが原則ですが、解雇が無効と判断された場合には、「本来は働けたのに会社が違法に働かせなかった」と評価されるため、会社は解雇期間中の賃金を遡って全額支払う義務を負うことになります。

このバックペイは、基本的に「解雇されていなければ確実に支払われた賃金」が対象となります。固定給は当然に含まれ、固定残業代なども対象となる可能性があります。一方で、実費性の強い通勤手当や、実際の労働が前提となる残業代は対象外となるのが一般的です。また、賞与については就業規則や支給実態によって扱いが分かれます。

さらに注意すべきは、この金額が非常に高額化しやすい点です。解雇無効を巡る紛争は長期化することが多く、労働審判から訴訟に移行すると1~2年、長い場合には3~4年程度かかることも珍しくありません。その間の賃金がすべて積み上がるため、本件のように年俸1,200万円のケースでは、単純計算でも3,000万円規模の負担となるリスクがあります。加えて、遅延損害金や、場合によっては賞与相当額なども問題となり得ます。

なお、従業員が解雇後に他社で収入を得ている場合には、その一部をバックペイから控除できる可能性がありますが、控除には上限があり、必ずしも全額が減額されるわけではありません。また、就労意思や能力が完全に失われている場合を除き、バックペイ自体が否定されるケースは限定的です。

社会的信用やレピュテーションの低下を招くリスクも

上場準備企業においては、労務管理やコンプライアンス体制が厳しく審査されます。不当解雇の判決が確定した場合、労務リスク管理の不備として評価され、上場審査に影響を及ぼす可能性があります。また、不当解雇に関する紛争は外部からの注目も集まりやすく、企業の社会的信用やレピュテーションの低下を招くリスクも否定できません。

以上から、本件のような事案では、安易に経歴詐称を理由として解雇に踏み切るのではなく、法的リスクを踏まえた慎重な判断が求められます。

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