今回取材に応じてくれたのは、中堅の精密機器製造メーカーに勤める伊藤さん(仮名・42歳)。彼が昨年経験した、ある新入社員をめぐる驚きのエピソードを明かしてくれた。
◆「それ、意味ありますか?」が口癖の新入社員
伊藤さんが「今年の新人は少し変わっているな」と感じたのは、配属初日のことだったといいます。
「それ、意味ありますか?」
最初は「生意気だな」と感じ、正直腹も立ったと伊藤さんは振り返ります。
「慣例でやっている作業を頼むと、必ず『なぜやるんですか』って聞いてくる。新人のくせに、って思いましたよ。でも無視するわけにもいかないから、最初は『そういうもんだから』って返していたんです」
しばらくすると、その”口癖”は社内でも話題になりはじめたといいます。「あの新人、また文句言ったらしいよ」「使いづらいよな」といった声もちらほら聞こえてきたそうです。上司としても、早急に指導しなければならないかと頭を悩ませていた時期があったとのことです。
◆「なぜやるのか」を答えられなかった自分
転機が訪れたのは、配属から2カ月ほど経ったある日のことでした。その新入社員が、またいつものように「これ、何のためにやるんですか」と問いかけてきたといいます。伊藤さんはいつも通り返答しようとして、自分がまともな答えを持っていないということに気づいたそうです。
「“なぜやるのか”を聞かれて、“ずっとそうだから”以上のことを説明できなかったんです。その瞬間、ハッと我に返ったんです。これって、改善の余地があるってことじゃないかと思いはじめました」
伊藤さんはその日から視点を変え、問い返してくる新入社員を問題児ではなく鏡として見るようにしたといいます。生意気に映っていた言動が、実は組織の盲点をついていたのかもしれないと感じはじめたのです。
そこで伊藤さんは思い切った行動に出ました。その新入社員を巻き込んで、部署全体の業務を棚卸しするプロジェクトを立ち上げたのです。
「彼に『じゃあ一緒に考えよう』って声をかけたんです。そしたら目を輝かせて……。あのときの顔は今でも覚えています」

