◆20年続いた報告書が”誰にも読まれていない”という衝撃
業務の棚卸しをはじめてみると、次々と驚くべき事実が浮かび上がってきたといいます。なかでも最も衝撃的だったのが、毎週月曜日に全員が1時間かけて作成していた週次報告書の存在でした。20年近く続けてきたその慣例は、誰もが“当然やるもの”と信じて疑わなかったものの、実際に確認してみると、関係者の誰にも読まれていないことが判明したのです。
「廃止しても誰も困りませんでした。それどころか、毎週1時間の作業がごっそりなくなって、チーム全体で喜んでいました。こんなことが本当にあるんだなって、私自身も驚きましたよ」
このエピソードはたちまち社内に広まり、「あの新入社員がまた何かやった」と他部署にも噂が届きはじめたそうです。やがてその評判は、上層部の耳にも入るようになっていったといいます。
◆異例のスピード昇格が示したもの
噂を聞きつけた直属の本部長が動いたのは、それから間もなくのことでした。伊藤さんのもとに「営業部の業務を一度、彼も交えて検証してみてくれ」という提案が届いたのです。改めて行われた業務検証の場で、その新入社員は複数の業務について具体的なアイデアや代替案を次々と提示したといいます。現場を熟知しているわけでもない新人が示した提案は、どれも的外れではなく、むしろ現場の人間が見て見ぬふりをしてきた問題に、真正面から切り込むものばかりだったそうです。
「改めて彼の発想の切り口に驚かされました。経験がないからこそ、余計なしがらみなく物事を見られるんでしょうね。これが強みなんだって、そのとき確信しました」
それから約1年後、その新入社員は異例のスピードでエリアマネージャーへと昇格しました。通常であれば最低でも5年のキャリアが必要とされるそのポストへの就任は、社内でも前代未聞の出来事だったとのことです。
その後、担当エリアの業績は着実に伸び始めているといいます。「ウチの会社を変えたのは、あの新入社員かもしれないです」と、伊藤さんは苦笑交じりに語ってくれました。
<TEXT/八木正規>
【八木正規】
愛犬と暮らすアラサー派遣社員兼業ライターです。趣味は絵を描くことと、愛犬と行く温泉旅行。将来の夢はペットホテル経営

