◆新型貧乏に共通する3つの危険な心理

「人間には、①『ヘドニック・アダプテーション(快楽順応)』という心理的傾向があります。これは例えば、給料が上がって喜んだのに少したつとそれが当たり前に感じるような状態です。だから収入が増えると、ライフスタイルのインフレを引き起こす。フードデリバリーやタクシーを頻繁に使い、サブスクの利用が増え、趣味や投資に多額のカネを費やすようになる。
しかし、一度上がった生活水準を下げるのは難しい。これは行動経済学の②『損失回避』という心理で、人間は失うことや、やめることを極端に嫌うからです。さらに、遠い将来の大きな利益よりも目の前の小さな利益(快楽)を優先してしまう③『現在バイアス』が働くので、支出を削ることも難しい。これら①〜③の要素が個人の性格や特性と絡み合うことで、新型貧乏になる可能性が生まれるのです」
これらの心理状態が重なり家計の収支バランスが崩れると、一気に新型貧乏に陥る危険性が高まる。特に影響が大きいのが、家計に占める割合が高い住居費だ。首都圏の新築マンション価格は4年連続で過去最高を更新し、東京都の家賃が3年で15%も上昇している現在、生活苦の大きな要因になっている。
「『同僚が買ったから』と住宅の購入に踏み切る人は今も昔も多いですが、同じ年収や年次だから同じ経済状態とは限りません。若い頃から貯蓄していたり、親が裕福で援助してくれる人もいる。年収は当てになるパラメーターではなく、買ったときはよくても後々ローンの支払いに苦しむ人もいます。一方、賃貸住宅に住む人なら家賃が安い郊外に引っ越す手もありますが、忙しいのに通勤時間が長くなるといったバランスで選びづらい人もいます」(風呂内氏)
◆家庭内の問題も新型貧乏の原因に
これらは甘い見通しが判断を誤らせ、さらに一度上げた生活水準が下げられなくなる典型的なパターンだろう。また、家庭内の問題も新型貧乏の原因になり得る。「少子化で子供1人当たりにかけるお金が増え、都市部では中学受験が一般化しています。すると塾の費用は上がりますし、教育にかかる出費は加速度的に増えていきます。本当は『ウチは公立でいい』という選択肢もありますが、都市部では選びづらい。出費を抑えるという選択が頭をかすめつつも心情的に難しいこともあります」(同)
また、高齢化した親の負担も新型貧乏の呼び水になる。
「公的支援を仰いでもなお、自身の生活が困窮しているのに、親の世話を続けている場合『現在バイアス』が働いている可能性が高いです。責任感に加えて、将来の自分の心配よりも親の面倒を見て感謝する顔を見たいという、本人の“目先の利益”が混在している状態です」(堀田氏)
より良い人生を送るために頭を悩ませた結果、自ら「新型貧乏」の沼へダイブしていくという、なんとも笑えない現代の喜劇だ。

