脳トレ四択クイズ | Merkystyle
キーマンが辞め、技術も顧客も失った…中小企業の「人材・技術・顧客流出」トラブル【M&A弁護士が解説】

キーマンが辞め、技術も顧客も失った…中小企業の「人材・技術・顧客流出」トラブル【M&A弁護士が解説】

技術・顧客を同時に失った事例

ある中小企業のM&Aでは、M&A後に主要技術者が退職し、その後、当該技術者が関与する新会社において類似事業が開始されました。同時に、対象会社の主要顧客の一部が当該新会社へ移行するという事態が生じました。

買主は、営業秘密の流出および不正な顧客引抜きがあったとして責任追及を検討しましたが、当該技術情報が営業秘密として保護されるか、また顧客の移行が自由競争の範囲内であるかが争点となりました。

さらに、M&A後の組織運営において、従業員間の不信感や情報共有の停滞が生じていたことも指摘され、顧客の移行は、単純に退職者の行為のみを原因とすることは困難な状況でした。

しかし、調査の過程で、売主社長がこの新会社の立ち上げに関与していたことが判明し、M&A契約書上の競業避止義務や勧誘禁止義務の問題と思われました。

その結果、売主社長に対する競業避止義務違反や勧誘禁止義務違反が強く推定され、共同不法行為としてキーマンに対する一定の責任も認められました。

まとめ

中小企業のM&Aでは、キーマンの退職を契機として、人材・技術・顧客が連鎖的に流出し、企業価値が大きく毀損するリスクがあります。その背景には、経営者交代に対する従業員の反発、社内の対立、情報共有の停滞といった組織的問題が存在することも少なくありません。

また、法的責任の追及においては、営業秘密該当性や違法な引き抜きの有無、因果関係の立証といった点で高いハードルが存在します。

そのため、人材・技術・顧客流出の問題は、契約上の手当てのみならず、M&A後の組織統合と運営体制を含めた総合的な対応が必要となる点を、実務上十分に認識しておく必要があります。

弁護士法人M&A総合法律事務所 代表弁護士
土屋 勝裕

あなたにおすすめ