第2章|「農業だけでは難しい」先輩移住者が語るリアル
Q. 実際に鳴門へ移住してみて、どうでしたか?
藤井さん: 「いや、農業は本当に大変ですよ。正直、“憧れだけ”では続かないと思います」
そう笑いながらも、藤井さんの言葉には現場を知る重みがあった。
春はらっきょう、夏はさつまいも、秋は選別作業、冬はわかめ。
大毛島の農家は一年を通して休みなく動く。作業は手仕事も多く、収穫は天候に左右されることも少なくない。
「農家さんは日々の作業に真剣に向き合っている分、新しい挑戦にまで手が回りにくい現実があります。」
一方で、藤井さんは“生産だけではない関わり方”を見つけていた。 現在は、ワインに合うらっきょうのピクルス開発やOEM製造、マルシェ販売、百貨店催事などを個人事業として展開している。
藤井さん: 「僕は“作る”より、“魅力を伝える”ほうが好きだったんですよね」

藤井 隆行さん
Q. 「らっきょう×ワイン」という発想はどこから?
藤井さん: 「仕事でオーストラリアにいた頃、ワインを飲みながら“らっきょうって合うな”と思ったんです。 でも、鳴門市は日本有数のらっきょうの産地なのに、僕が訪れた3年前には、道の駅にもどこにも“地元のらっきょうを使った加工品”がほとんど売られてなかった。
そこで、『ないなら自分で作ってみよう』って。」
その行動力が、今の仕事につながっている。

藤井さんが企画・製造・販売する鳴門らっきょピクルス『らっきょとワインと私』
第3章|鳴門で感じた、人との距離の近さ
Q. 鳴門の人たちとの関わりはどうでしたか?
藤井さん: 「徳島って、おせっかいなくらい面倒見がいいんですよ」
藤井さんが鳴門らっきょの加工品を作ろうと決めた3年前。
藤井さんの想いに呼応するように、出会った人から加工業者を紹介され、農家につながり、創業支援とも出会った。
2週間の滞在中だけで、藤井さんの中には“事業の輪郭”が見え始めていたという。
「“あの人に聞いたら?”って、どんどん人をつないでくれるんですよね」
隣で聞いていた鳴門市職員も頷く。
鳴門市職員: 「この事業の目的のひとつに、”鳴門の日常を知ってもらう”というものがあります。実際に鳴門の人と出会い、交流し、鳴門の町で暮らす人と共に生きていく感覚を知ってほしいんです」
半農半X推進シェアハウス事業参加者の1日は、半日が農業、半日が自由時間。 だからこそ、海を見たり、町を歩いたり、人と話したりできる。
都会にはないゆったりとした時間の流れを感じながら、地元の人と触れ合えるのも、この事業の魅力のひとつだ。

らっきょの袋詰め作業をする相澤さん。同じ空間には袋詰めや箱詰めの作業をする地元の人もおり、仕事を通してたくさんの人との出会いがある
Q. 相澤さんは、鳴門の印象をどう感じましたか?
相澤さん: 「すごく“いい空気”だなと思いました。海もきれいだし、人もフレンドリーで」
畑に吹く風。
静かな海辺。 夕方になると、空がゆっくりオレンジ色に染まっていく。
「“ここで暮らす”っていうイメージが、少し湧きましたね」

ウチノ海の夕日

