それは、利便性の向上に加え、地域一体のブランド力をも押し上げる魅力的なプロジェクトです。ただ、長年そこで暮らしてきた住民にとっては、必ずしも恩恵ばかりとは限らないようです。
今回は、駅前再開発の一環で2棟のタワーマンションが建ったことで、日々の生活が一変したという大河さん(仮名・42歳)に話を聞きました。開発の陰で静かに積み重なる“地元民の苦悩”に迫ります。

◆1500世帯分のタワマンが建設された駅前の再開発
大河さんがこの街で生まれ育ってから、かれこれ40年以上が経ちます。幼い頃には駅を降りると視界に田畑が広がっており、のんびりとした空気が漂っていたそうです。
それが数年前の再開発を機に、駅前には商業施設や飲食店が立ち並び、見た目はすっかり“大都会の駅前”へと変貌を遂げたといいます。
そのシンボルとも言える存在が、駅直結にそびえ立つ2棟のタワーマンションです。いずれも高層階まで住戸が詰まっており、合計すると1500世帯規模のビッグプロジェクトだそうです。
「一気に1500世帯増えるんですから、増加人口にしたらもっとですよ。その人たちが通勤通学などで駅を利用するのだからもう大変なんです」
大河さんはため息交じりにそう語りました。再開発に合わせてホームの構造や改札口も多少なりとも改良されたといいます。
しかし、増えた住民の数に対しその整備はとても追いつくものではなかったようです。
日によっては改札を通る際にわざわざ行列ができるほどの混雑が発生しており、これほどの状況になるとは夢にも思っていなかったと、大河さんは言います。
◆座れなくなった通勤電車に疲弊する日々
タワマンができたことで、大河さんの朝の通勤風景は一変したといいます。以前は、終点のターミナル駅まで、運が良ければ座っていけるほどゆとりがあったそうです。それが今では、ホームに流れ込む人波に押されながら、身動きもままならない状態での乗車が日常になってしまいました。

さらに、混みすぎて乗車できず、電車を乗り過ごしてしまう“乗りそびれ”も珍しくないとのことです。
「遅延や乗りそびれを考えると、今は2〜3本ほど早い電車に乗らないと間に合わないんです」
こうした状況を踏まえると、以前と比べて通勤にかかる時間は約20分も増えてしまい、駅の再開発と引き換えに大きな負担を被ることになりました。

