老舗喫茶の空気を支える、若いスタッフたち

もうひとつ印象的なのは、老舗喫茶の空気を支えているのが、必ずしもその時代を知る人たちではないことだ。
喫茶店の渋いマスターとカウンター越しに会話を楽しむ……。そんなイメージがあるが、実際にそういった店は神保町でもなかなか見かけない。学生街でもあることからか、神保町の喫茶店は、若いアルバイトスタッフが中心になって店を回しているところが多い。キャッシュレス決済にも対応し、海外からの来店客を案内しながら、それでも店の空気はどこか昔のまま保たれているのが不思議だ。
神保町の喫茶店は、「変わらない場所」として語られがちだ。けれど実際には、新しい客層、求められるメニューをも受け入れながら、少しずつ更新され続けている。
保存されているというより、変化しながら続いているといえるだろう。
神保町ではいまも、“座って過ごす場所”が更新され続けている

行列のできる純喫茶、本屋に併設されたカフェ、出版社が街に開くラウンジのような空間。かつて一軒の喫茶店が担っていた“滞在”の役割は、いま街のなかへ広がり、多様化している。
読書をしたい人も、打ち合わせをしたい人も、ひとりで作業をしたい人も、ただ少し休みたい人も。神保町には、その時々の目的に合わせて座って過ごせる場所がある。
だからこの街には、一度きりではなく、何度でも通いたくなる理由があるのかもしれない。
喫茶文化のかたちが変わり続けること自体が、神保町の新しい歴史を、また少しずつつくっている。
