「思い悩んだ末に、私たち夫婦は転居を決意しました」
今回は、善意の結果が思わぬ方向にいってしまった井上綾乃さん(仮名)のエピソードを紹介しよう。
◆発端は隣室から聞こえた悲鳴「誰か助けて!」

しかし、その平穏は入居後すぐに破られた。ある日の夕方、井上さんが自宅で一人過ごしていると、突如、隣室から激しい衝撃音が鳴り響いた。直後、女性の悲鳴が聞こえてきたのである。
「誰か助けて!」
何度も繰り返される絶叫と泣き声に、井上さんは「このままでは命に関わるかもしれない」と強い恐怖を感じ、震える手で警察に通報した。
◆不動産屋からの理不尽な連絡
しばらくしてアパートに到着した警察官によって、騒動の原因が隣室カップルのDV(家庭内暴力)であることが判明した。あれほど激しい暴力沙汰であれば、加害者は当然、逮捕されるものだと井上さんは考えていた。ところが、翌日以降も隣のカップルは何事もなかったかのように2人で部屋を出入りしていた。あれほどの騒ぎにもかかわらず、なぜ逮捕に至らないのか。井上さんは全く理解できず、戸惑ったという。
さらに彼女を困惑させたのは、不動産屋の対応だった。
翌日の昼頃、不動産屋から井上さんの携帯電話に着信があった。昨夜の件に関する事情確認だろうと思い電話に出たが、耳に飛び込んできたのは、予想外の言葉だった。
「お宅の部屋が騒がしいと、下の階の入居者から苦情が来ているのですが」
驚いた井上さんは、「昨日、隣の部屋から『助けて』という悲鳴が聞こえたため、私が警察へ通報しました。騒動があったのは隣室です」と説明した。
しかし、不動産屋の担当者から確認不足に対する謝罪の言葉はなく、隣室への対応についても「対策は難しい」と告げられるだけだった。

