◆周囲の仲間が一斉に振り返り”意気消沈”
その声を聞きつけたのか、前後の席から4人が一斉に振り返りました。全員が女性の仲間だったようで、岸本さんには鋭い視線が浴びせかけられます。「なんかクレームつけてる人がいる、という雰囲気がその周囲に漂い始めて。気づいたら僕が悪者みたいな状況になっていました。あの時ほど女性が怖いと感じたことはありませんでした。恥ずかしながら、私はにらみ返す度胸はありませんでした」
言っていることは間違っていないという自覚はあったものの、あの瞬間は完全に孤立した感じだったと振り返ります。車掌を呼ぶことも頭をよぎりましたが、再び自分の座席に戻ってしまった岸本さん。
「私のプランでは、トイレを済まし、駅弁と共に冷えたビールを飲み干し終点の東京まで熟睡するはずだったのです。でも、トイレは無理となった今、不本意ですがこれ以上の尿意は禁物なので、ビールは諦め、駅弁を少しだけ食べて残りの2時間弱を乗り切ることにしました」
◆最後の最後まで後味の悪い新幹線移動
結局、岸本さんは東京駅に到着するまでの間、なんとも居心地の悪い時間を過ごすことになったそうです。そして降車の際、何気なくその女性グループの方へ視線を向けると、全員が口をへの字に結んでにらみつけながら降車していったといいます。「最後の最後まで後味が悪くて。出張の疲れより、あの集団から受けた精神的ダメージの方が数倍こたえましたよ。次の出張の際はドア付近を予約することに決めました。当分このトラウマからは解放されないと思いますけど……」
新幹線の車内マナーをめぐる問題は、今や珍しくない光景になりつつあります。正当な指摘をした側が悪者にされてしまうような状況は言語道断で、インバウンドに湧く今だからこそ正されるべきですね。
<TEXT/八木正規>
【八木正規】
愛犬と暮らすアラサー派遣社員兼業ライターです。趣味は絵を描くことと、愛犬と行く温泉旅行。将来の夢はペットホテル経営

