◆研究者の証しである「博士号」の価値
――現在の日本では、博士課程修了後も非常勤講師をかけ持ちするなど、キャリアが不安定になりやすい現状があります。この状況についてはどう感じていますか?本髙:文系・理系でも状況は違うと思いますが、世界的に見れば、採用条件に博士号取得を必須にしている企業は増えてきていると思います。日本でも最近、「ポケットモンスター」ブランドを手がけるポケモン社が、理工系・農学系の博士号取得者を対象とした求人を出したことも話題になりました。博士号を持っているというのは、突き詰めれば一人の研究者として世の中に認められていることの証し。ほかに代えられない確かな価値だと僕は思うんです。博士課程修了者への社会の理解が広まると同時に、修了後の進路の選択肢も、もっと広がっていくといいなと思いますね。

本髙:僕自身は昔から教育への関心が強く、修士課程では別の通信制大学に通い、教職課程も履修しました。たとえ大学講師という形ではなくても、何かしら教育の仕事には関わっていきたいですね。研究の世界の中だけで生きるのもいいですが、外の世界に身を置いているからこその強みもあるはず。一人のタレントとして、研究の世界と一般社会とをつなげていく接着剤的存在になれたらいいなと思っています。
【Katsuki Motodaka】
1998年生まれ、東京都出身。STARTO ENTERTAINMENT所属。「B&ZAI」のキーボードを担当。芸能活動の傍ら早稲田大学で学び、’26年3月に同大大学院創造理工学研究科にて博士号を取得。舞台やテレビ番組などで幅広く活躍。趣味は釣りとフットサル
(※1)B&ZAI(バンザイ)
STARTO ENTERTAINMENT所属ジュニア内の8人組グループ。バンド編成での熱いパフォーマンスが武器で、’26年3月に通算100公演を達成
(※2)経営システム工学
統計技術などの知見を駆使し、企業や社会の仕組みを最適化する学問。データや数理モデルに基づき、人・モノ・カネ・情報の流れを効率化して課題を解決する
(※3)チケット不正転売禁止法
興行チケットを定価より高い価格で営利目的で転売することや、その目的で譲り受けることを禁じる法律(’19年施行)
(※4)日本経営工学会の大会で
’22年秋、公益社団法人日本経営工学会主催の秋季大会で「ベストプレゼンテーションアワード」を受賞。現役アイドルの受賞はニュースになった
(※5)査読つき学術誌への論文掲載
早稲田大の場合、博士号取得には査読(専門家による客観的評価)を経て学術誌に論文が掲載される必要がある。掲載まで年単位の時間が必要になることも
(※6) 「シークレットライフ」
’25年3・4月上演の本髙主演舞台。自身の専門分野「オペレーションズ・リサーチ」の第一人者をモデルにした天才統計学者の孫役を演じた
(※7)公聴会
博士号取得の最終関門となる公開審査(最終口頭試問)。主査や副査などの審査委員の前で、研究成果のプレゼンテーションと質疑応答を行う
取材・構成/松岡瑛理(本誌)・堤美佳子 執筆/堤美佳子 撮影/植田真紗美
―[インタビュー連載『エッジな人々』]―

