失業率を変化させない成長率が「潜在成長率」
戦後の高度成長期には、農村にトラクターが、洋服会社にはミシンが来たことで、労働生産性が大きく向上しました。そこで、「経済成長率が相当高くないと失業が増えてしまう」経済だったのです。ところが最近は、経済成長率が低いのに労働力希少(労働力不足と呼ぶ人が多いですが)になっています。
失業率を変化させない経済成長率を「潜在成長率」と呼びますが、それが数十年の間に大きく低下したわけですね。
潜在成長率低下の主因は「キャッチアップ」
潜在成長率が低下した理由は多数あります。すぐに思いつくのは少子高齢化でしょう。現役世代の人数が増えていた高度成長期と減っている現在とでは、潜在成長率が下がるのが自然ですから。もっとも、それより重要な理由が他にあるのです。
最大の要因は、「キャッチアップ」です。高度成長期は新しい発明・発見がなくても、「米国で使われている技術を日本でも使う」だけで国内で使われている技術は急速に進歩しました。しかし、日本で使われている技術が米国と同じレベルになると(キャッチアップすると)、「新しい発明・発見がない限り技術が進歩しない」ことになるのです。日本のすべての農家がトラクターを持っている状態では、それを最新式のトラクターに買い替えたところで、労働生産性はそれほど急には上がりませんから。
もう1つ、経済のサービス化の影響もあるでしょう。若者が洋服や自動車を買っていた時代には、洋服工場や自動車工場の機械化によって労働生産性が大きく向上していました。しかし、若者が洋服より美容院のサービスを欲するようになり、高齢者が介護や医療のサービスを受けるようになると、美容院や老人ホーム等は機械化が容易ではないため、労働生産性がなかなか上がりません。労働者の数が増えない一方で労働生産性が上がらないので、経済成長率が低くても失業者が増えないのです。
