
「60歳定年」の時代は、すでに遠い過去のものになりました。少子高齢化が進むなか、「長く生き、長く働く」ことが前提になりつつあります。一方で、AIの台頭やデジタル技術の進化によってビジネスの姿はここ十数年で大きく変わり、「一度会社に入れば安心」という考え方は通用しなくなりました。こうした環境のなかで、これからの「変化が多く、働く期間も長い時代」を生き抜くには、どのようなスキルが求められるのでしょうか。シニアコンサルタントの難波猛氏の著書『ボスマネジメント 「成果を出している人」が上司と話していること』(アスコム)より、その必須スキルをみていきましょう。
漠然と「今のキャリア」に満足感を覚えていても…
あなたは、自分のキャリアについてどんなことを感じていますか。「一点の曇りもなく満足しているし、今後に何の不安もない」という方なら、本記事は不要かもしれません。
ただ、色々な会社の現場でキャリア開発に関わる仕事をしていると、多くの方が何らかの不安やモヤモヤを抱えている現実に直面します。そうした方へ、納得できるキャリア形成の考え方とキーパーソンである上司との付き合い方に関するヒントを提供するために書きました。
漠然と、「今の仕事を続けていく気がする」「多少の不満はあるが、今いる会社で定年まで働くと思う」「先輩社員と同じような道筋を辿るのだろう」「上司は仕事の指示をしてくる人でキャリア形成には関係ない」「転職の予定もないし、わざわざキャリアを考える必要はない」と思っている人もいるかもしれません。
たしかに、これまでは、新卒で会社に入社すれば定年まで勤め上げられ、その後の人生は安泰だと考えられていましたし、現在もそういう可能性はゼロではありません。
しかし、長く生き、長く働くことが当たり前になると、その前提は簡単に崩れてしまいます。総務省統計局が発表している2050年の平均寿命の推計は、男性84.02歳、女性90.40歳(「2050年以降の世界について」平成30年1月16日)です。
また、改正高年齢者雇用安定法が2021年に施行され、70歳までの就業機会確保が努力義務化される中、今までより長く働くことは、もはや「予測」ではなく「前提」になりつつあります。さらに、人生100年時代といわれる今、70歳で定年を迎えた後の人生は、30年も残されています。一方で、倒産企業の平均寿命は23.1年(東京商工リサーチ2023年調査)とされており、勤める会社の寿命より長く働く必要がある、ともいえるかもしれません。
そうした環境下で、あなたは、今の状態を維持しながら、幸せな人生を送り続けられると思うでしょうか。
今持っているスキルは、いずれ100%陳腐化する…変化の時代に必要なキャリア
残念ながら、ひとつのスキルや仕事だけで「長く生きる」「長く働く」時代を乗り切ることは、もはや現実的ではなくなってきています。なぜなら、年齢にかかわらず今持っているスキルは、いずれ100%陳腐化するからです。AIやデジタル技術の進化、グローバル競争、ビジネスモデルの急速な更新……。世の中は、想像以上のスピードで変わり続けています。仕事の仕方どころか、現在存在している仕事自体が消滅するケースもあります。
猛スピードで変化を続ける時代に、手持ちのスキルだけで乗り切ろうとすることは大きなリスクにもなり得ます。それより、これからのキャリアを自分でデザインし、どうアップデートしていくかを考えてみることです。
「これまでのやり方が通用しなくなった」40代・営業職の今後のキャリア
たとえば、40代前半の営業職Aさんは、大手メーカーで長年トップクラスの成績を上げてきました。顧客との信頼関係を築く力や現場感覚には自信があり、評価も安定していました。
しかし、営業プロセスにデータ活用やデジタルマーケティングが本格的に導入され始めると、「これまでと同じやり方では成果が出にくい」「このままでは先細りしそう」という違和感を覚えるようになります。Aさんは1on1で上司に相談しました。
「この先、私に対して何ができるようになることを期待していますか?」
「Aさんは経験豊富で顧客理解が強みです。会社としては、その強みを活かして、提案を仕組み化して部署全体の力を底上げする動きを意識してほしいですね」
次の半年で、新しいツールの学習、企画ミーティングや新規プロジェクトに関わる経験を積み、Aさんは「自分で売るだけの人」から「自分でも売れる人」×「組織全体へ価値を設計して提供する人」へとキャリアの幅を少しずつ広げることに成功しました。
Aさんは自分のキャリアを上司に相談し、アドバイスを受け、これまでのスキルを活かしながら新たなスキルとポジションを手に入れたということです。長く生きる、長く働く時代では、このように対話を通じて「学び直す」「自分をアップデートする」というスタンスがとても重要になります。
今や個人と会社は、従来のような一方的な雇用関係ではなく、お互いに「選び」「選ばれる」関係へと移行しています。
