終身雇用の崩壊、黒字でもリストラされる時代
かつての日本型雇用は「メンバーシップ型」と呼ばれ、社員を長期育成・終身雇用する前提で設計されていました。会社が新卒一括採用して配属や異動を決め、年功序列的にキャリアのレールを敷くというものです。社員はそのレールに実直に従っていけば、定年まで一定の安定と処遇が約束されていました。これらは、日本経済が安定的に成長し続け、製品寿命が長い時代に適した人材マネジメントでした。
しかし、この仕組みをそのまま維持できる会社は、急速に減っています。会社を取り巻く状況は複雑さと厳しさを増し、もはや、全社員のキャリアを会社が数十年単位で責任を持って支え続けることは、ほぼ不可能になりつつあるのです。
実際、2025年に人員削減を行った上場企業41社中28社(68%)は「黒字リストラ」でした(東京商工リサーチ)。「うちの会社は黒字だから安泰」とはいえない時代に突入しているのです。
そこで個人に求められるのが、「エンプロイアビリティ(雇用されうる能力)」です。役職、年齢、雇用形態に関係なく、今いる会社から必要な人材として認知されるだけでなく、社外からも必要とされる人材になるということです。
エンプロイアビリティが高い状態なら、今の会社で働き続けることも、転職することも、起業や副業をすることも、自分の自由意思で選択することが可能になります。逆に、これが低い状態だと「今の会社にしがみつくしかない」「納得できない指示にも従うしかない」と色々な我慢をしながら働き続ける以外に、選択肢がありません。一方の会社側は、そうした選択肢を持つエンプロイアビリティの高い人材に選ばれる、「人材の流出しにくい魅力的な会社」であることが求められています。
会社が個人を一方的に管理するのではなく、個人も会社を選び、会社も個人を選ぶ。一見ドライに見える関係ですが、実はとても健全な関係です。
この対等性があるからこそ、人は自分の意思でキャリアを考える必要性に気づき、その考えに基づいて行動することで、人生の選択肢や納得感を拡大させることが可能になります。
まずは漠然とした不安や期待に目を向ける
それが、現在の働き方や人事戦略の重要なテーマとされる「キャリア自律」です。キャリア自律は、「自分勝手に生きる」という話ではなく、「時代に振り回されず、組織や社会のニーズを理解しながら自分の人生を自分の意思で選択できるようになるための生き方と働き方」といえます。
では、自分の意思でキャリアをデザインする「キャリア自律」とは、具体的にどのような行動から始めると良いのでしょうか。いきなり壮大な人生計画を描きましょうということではありません。最初の一歩はとてもシンプルです。自分が抱えている不安や期待やモヤモヤに、きちんと目を向けることです。
たとえば、「このまま同じ仕事を続けて大丈夫だろうか」「自分は何を大事にして働きたいのか」「この会社でどんな活躍ができるのか」「上司や会社は自分に何を期待しているのか」「自分が人生を切り拓くうえでの強みは何か」「どんな人生を歩めたら幸福なのか」……、こうした問いを自分に投げかけることこそが、キャリア自律のスタートなのです。
難波 猛
マンパワーグループ株式会社 シニアコンサルタント
