52歳で長年勤めた接客業の会社を退職し、未経験のWebマーケティング職へ転職した安室玲さん(仮名)は、AIの助言を鵜呑みにした結果、3か月以上の無職期間と年収200万円以上の減少という現実に直面した。
◆人間関係に疲弊してAIに「転職したい」と相談

当時の年収は500万円。1人暮らしで生活に困っているわけではなかったが、精神的な消耗は限界に近づいていた。
「このまま定年までここで働くのかという不安を抱えながら、話題になっていた生成AIに相談を持ちかけてみたんです」
内容は「人間関係がつらく、転職したい。未経験でも挑戦できる仕事はあるか」というものだった。
AIの返答は具体的で、背中を押すような内容だった。「未経験でも成長産業ならキャリアの伸びしろが大きい」としてWebマーケティング職を提案してきた。さらに「勢いが大事」「環境を変えることで新しい可能性が開ける」といった言葉が続いた。
◆「都合の悪い現実」を直視できなかった
なぜ、その回答をそのまま信じてしまったのか。安室さんは今こう振り返る。「当時の私は冷静さを欠いていました。AIは私の『辞めたい』という感情に寄り添う言葉を返してくれ、その心地よさに依存してしまいました」
AIの示す「希望のある未来」にすがりつきたい心理が働き、自分にとって都合の悪い現実……未経験転職の厳しさや生活資金のリスクなどを直視できなかったと安室さんは言う。
52歳という年齢での転職が難しいと分かっていながら、AIの言葉に背中を押され、安室さんは十分な準備もないまま現職を早めに退職するという決断に踏み切った。

