◆20社に応募して内定1社、無職期間が続く

未経験かつ52歳という条件では、書類選考すら通らない日々が続いた。収入が途絶えるなかで貯金は急速に減り、「あのとき、なぜあんな軽率な判断をしたのか」と自分を責める日もあったという。
応募社数は約20社、面接まで進んだ件数は3社、不採用の数は19社。無職期間は3か月以上。これは、50代で未経験職に挑む以上、決して珍しい結果ではない。むしろ健闘している部類だが、AIに背中を押されて迂闊に退職を決めた安室さんにとって、あまりにも重い現実だった。
最終的にWebマーケティング職への転職は実現したものの、年収は約300万円程度にとどまった。転職前の500万円と比べると、200万円以上の減少である。
仕事は常に忙しく、転職前に想定していた条件とは大きく異なるものとなった。
◆きちんと専門家にも相談していれば…
安室さんは、問題の本質をこう整理する。「AIは一般論としては正しいことを言っていましたが、私の年齢、スキル、生活状況、市場価値までは把握していません。にもかかわらず、私は『AIの判断が正しいはずだ』と思い込んでしまいました」
AIの回答はそれ自体が間違っていたわけではない。成長産業への転職が新しい可能性を開くこともある。しかし、その一般論が52歳・未経験・接客業出身という自分自身の個別の文脈に当てはまるかどうかを、安室さんは検証しなかったのだ。
「あのとき、AIの助言を鵜呑みにせず、キャリアの専門家や信頼できる人にも相談していれば、もっと現実的な判断ができたはずだと痛感しています」

